「マティス 自由なフォルム」(国立新美術館)開幕レポート。心踊る色彩とかたちの世界へ
20世紀最大の巨匠のひとりアンリ・マティス。その切り紙絵に焦点を当てる「マティス 自由なフォルム」展が、国立新美術館でスタートした。会期は5月27日まで。
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©︎ Succession H. Matisse
東京・六本木の国立新美術館で、20世紀最大の巨匠のひとりアンリ・マティス(1869〜1954)。その切り紙絵に焦点を当てる「マティス 自由なフォルム」展がスタートした。会期は5月27日まで。監修は米田尚輝(国立新美術館学芸員)。
本展は、マティスが晩年に過ごしたフランス・ニースにあるニース市マティス美術館の全面協力を得て、絵画、彫刻、素描、版画、テキスタイルなど約150点を紹介するものだ。当初2021年に開催予定だったが、コロナ禍の影響で会期を変更し、開幕に至った。
会場は、ニースでの作品をメインにしながら、様々な時代と要素を持つ作品群が緩やかつながりを持つように構成されている。セクション1「色彩の道」では、マティスの最初期の静物画からフォーヴィスムの特徴が見られるパリ時代の作品、南仏での作品、絵画と彫刻の実践など、多彩な表現を実験的に描いている作家の若かりし様子が紹介されている。
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©︎ Succession H. Matisse
1917年のニースへの滞在をきっかけにアトリエを同地に移したマティスは、そこで各地の文化要素を持つオブジェを収集。それらをインスピレーション源に、自身の創造の現場をひとつの舞台かのように世界観を構築・作品制作を行っていった。実際に展示されているテキスタイルや肘掛け椅子などの調度品は、マティスが描いた作品のなかにたびたび登場するモチーフでもあったという。
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©︎ Succession H. Matisse
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©︎ Succession H. Matisse
1920年にパリのオペラ座で上演されたバレエ作品「ナイチンゲールの歌」の舞台装置と衣装デザインを手がけたマティスは、そこからより大がかりな装飾作品を手がけていくこととなる。1930年にはアメリカのバーンズ財団より装飾壁画の注文を受け、15メートルを超えるダイナミックな作品を生み出した。さらに、タペストリー制作の習作として描かれた《パペーテ─タヒチ》や《森の中のニンフ(木々の緑)》も残っており、本章ではマティスが舞台装置から大型作品の制作に至るまでの経緯が紹介される。
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©︎ Succession H. Matisse
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©︎ Succession H. Matisse
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©︎ Succession H. Matisse
本展のメインテーマでもある切り紙絵による「自由なフォルム」が生まれたのは、マティスが書物『ジャズ』(1947)や『ヴェルヴ』を手がけたことがきっかけとなっている。切り絵の可変性に着目したマティスはその後、さらにその手法を展開させていき、《花と果実》といった約4×8メートルの大作や《ブルー・ヌード Ⅳ》を含む連作を次々と生み出していった。切り紙絵ならではの紙の重なりや色の透け具合などをよく観察してみるのも面白いだろう。
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©︎ Succession H. Matisse
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©︎ Succession H. Matisse
最終章では、晩年のマティスによる大作である「ヴァンスのロザリオ礼拝堂」プロジェクトについて紹介。マティスの切り紙絵からデザインされた6色のカズラ(上祭服)の雛型が展示されているほか、会場には礼拝堂を再現した空間も。様々な職人たちとの協働によって建設されたこの礼拝堂を通じて、マティスの総合芸術をうかがい知ることができるだろう。
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©︎ Succession H. Matisse
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©︎ Succession H. Matisse
内覧会には、本展アンバサダー・音声ガイドを務める安藤サクラも登壇。偶然ニースにも足を運んでいたという安藤は、本展について次のようにコメントを寄せている。「アートに詳しくはないものの、マティスは自身が知っているなかでも好きなアーティストのひとり。2023年のカンヌ国際映画祭では隣町のニースに半月ほど滞在したが、その渡航直前に本展のアンバサダーの話をいただき、不思議なご縁を感じている。実際に足を運んだヴァンス礼拝堂に入ったときの心踊る、軽やかな感覚は特別だった。そのときの感覚が、本展会場でも感じられたことに驚いている」。
丁寧かつ伸びやかに設計された色やフォルムが、鑑賞者を解きほぐし、心躍らせる。そんなマティスの集大成とも言える作品群が織りなす、華やかで明るい空間をぜひ実際に目の当たりにしてほしい。
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