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「ルイーズ・ブルジョワ展」(森美術館)開幕レポート。地獄から帰還し、魂の再生を語る【3/4ページ】

 第2章「地獄から帰ってきたところ」では、父親に対する複雑な感情をテーマに、心の不安定さを表現した作品が展示。最初の展示室の中央にあった大きな構造体は、ルジョワがニューヨークの取り壊し中の建物から持ち込んだ防火扉を再利用した作品《罪人2番》(1998)。作品の中心に置かれた小さな椅子と防火扉に設置された鏡は、子供の罪の意識や罰の恐怖を象徴しており、上部に刺さった矢は、親からの叱責や、他者の目線、逃げ場のなさなどをを象徴している。

第2章「地獄から帰ってきたところ」の展示風景より
《罪人2番》(1998)の内部

 次の部屋では、洞窟状の作品《父の破壊》(1974)が展示。ブルジョワは幼少期に、暴力的で支配的な父親に対して、母や兄弟とともに父親を食卓で解体して食べるという幻想を抱いていた。父親に対する愛憎を解体して消化し、自己を取り戻す意図が込められたという作品だ。

第2章「地獄から帰ってきたところ」の展示風景より、《父の破壊》(1974)

 ガラスケースに入った《カップル》の作品を経て、次の展示室では大型の電線リールのような作品が目を引く。床には女性の下半身のマネキンが置かれており、まるで引き裂かれそうな緊張感が生まれている。《シュレッダー》(1983)というタイトルの本作を通じ、ブルジョワは攻撃的な感情を作品に表現することで、その感情を相対化して家族に向けないようにしていたという。

第2章「地獄から帰ってきたところ」の展示風景より、立体作品は《カップル》《カップル》(いずれも1997)
第2章「地獄から帰ってきたところ」の展示風景より、左は《シュレッダー》(1983)

編集部

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