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ソウルで見る、世界最大級の個人コレクション「ピノー・コレクション」【2/3ページ】

 2階と3階は平面作品が中心だ。ミリアム・カーン、ピーター・ドイグ、マルレーネ・デュマス、リュック・タイマンス、アニカ・イ、ルーカス・アルダなどによる多様な作品が並ぶ。

 なかでもアニカ・イの近作群は興味深い。《§£†§ƥ†》(2022)や《ÖK§†§ñ§ßMR×ñ》(2023)などの作品タイトルは、それぞれの英名タイトルを機械学習アルゴリズムにかけることで、解読不能な新しい言葉となったもの。画面は、絵画的な筆致や、血液細胞、魚卵、ひっかき傷や破裂した皮膚、ポリープや甲殻類、深海底の起伏など、認識可能な形と抽象的な形の両方を描きつつ、複雑な手法によってホログラフィックなテクスチャーが生み出されている。

展示風景より、奥に見えるのがアニカ・イの作品
Photo by STUDIO JAYBEE
©SONGEUN Art and Cultural Foundation and the Artist. All rights reserved.
展示風景より、中央がピーター・ドイグ《Bather (Night Wave)》(2019)
Photo by STUDIO JAYBEE
©SONGEUN Art and Cultural Foundation and the Artist. All rights reserved.

 ルドルフ・スティンゲルの絵画も見るものを惹きつけてやまない。スティンゲルはアトリエの壁に掛かっている抽象画を写真に撮り、さらにそれを画面の中に描いている。フォトリアリズムはスティンゲルの絵画作品に不可欠な要素であり、鑑賞者はそれに対峙するとき、新たなイメージとの出会いを体験することだろう。

展示風景より、ルドルフ・スティンゲルの作品群
Photo by STUDIO JAYBEE
©SONGEUN Art and Cultural Foundation and the Artist. All rights reserved.

 地下のドミニク・ゴンザレス゠フォルステルによる映像インスタレーション《Opera(QM.15)》(2016)も大きなインパクトを与えるものだ。真っ暗な空間には、作家自身がマリア・カラスに扮したホログラフのような映像が浮かぶ。赤いドレスはマリア・カラスの晩年を象徴するものであり、歌声には実際のカラスの録音が使用されている。ゴンザレス゠フォルステルは、この幻影のような作品について、「演劇や映画よりも、スピリチュアルなセッション、つまり、ある種の準備されたトランス状態、強烈な芸術的瞬間の幻影や再出現を可能にする、ある種の霊との交信の試みと共通点がある」と説明している。

展示風景より、ドミニク・ゴンザレス゠フォルステル《OPERA(QM.)》(2016)
Photo by STUDIO JAYBEE
©SONGEUN Art and Cultural Foundation and the Artist. All rights reserved.

 ピノー・コレクションが長年パートナーシップを築いてきたアーティストたちが一堂に集う本展。現代美術が盛り上がるソウルだからこそ実現した貴重な機会をぜひ現地で目撃してほしい。

 なお本展は、サンローランがスポンサーを務めている。サンローランはそのブランド設立当初よりアートやカルチャーを支援しており、近年はその姿勢をより強めている。昨年、日本で行われた「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」(国立新美術館)とそれに伴う福島で実施された白天花火《満天の桜が咲く日》などはその顕著な例だ。

 そしてSONGEUNの展覧会と同時開催されている、サンローランのソウル旗艦店におけるスペシャルインスタレーションも見逃せない。

編集部

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