「企画展 歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界」(泉屋博古館東京)開幕レポート。歌、物語、絵画が織りなす芸術世界へ
泉屋博古館東京で、やまと絵を通じて描かれてきた物語や歌を紐解く展覧会「企画展 歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界」がスタートした。会期は7月21日まで。
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東京・六本木の泉屋博古館東京で、やまと絵を通じて描かれてきた物語や歌を紐解く展覧会「企画展 歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界」がスタートした。会期は7月21日まで。担当学芸員は実方葉子(泉屋博古館 学芸部長)。
やまと絵とは、平安前期より見られる国風の絵画で、中国より学ぶ唐絵に対して発展してきたものだ。華やかな色彩と細密な描写が特徴であり、時代ごとにかたちを変化させながら近代まで描き継がれてきた。
本展では、主に江戸時代初期に描かれたやまと絵をメインに、「歌絵」「物語絵」「れきし絵」の3つに分けて展示されるとともに、その読み解きかたや注目ポイントが紹介されている。
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第1、2展示室では、絵画と和歌の関係性が見られる「歌絵」を展示している。歌絵とは、四季折々の風景や人の心情に由来して紡がれた和歌を絵画のなかで表現したもので、平安中期の和歌の隆盛とともに広がったという。31文字という制限のなかで生み出されてきた和歌独自の表現が、画面の構図や描かれ方を工夫することで絵画のなかで再現されている点に注目してほしい。
また、和歌から連想される情景を描いたものから、絵から受けた印象をまた歌として詠んだものまでも存在する。その連鎖のなかから芸術が生み出され続けてきたこともうかがえる。
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様々な和歌を描いた扇が屏風のなかに散りばめられているのが印象的な作品だ。有名な「田子の浦」の句を表現した扇面や、イメージのない和歌をあえてダジャレ的に解釈して絵画化されたものも
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和歌のなかで詠まれた実在する風景をそのまま描くのではなく、空想の土地のように表現して描いている
第3展示室では「物語絵」を紹介している。物語は元来、音読で読み聞かせを行いながら絵を鑑賞するものが多く、絵巻物から、冊子、扇、屏風までと様々な視覚的表現を用いて制作されるようになっていった。展示室では、中国の天狗・是害房(ぜがいぼう)が比叡山で大暴れする話を描いた《是害房絵巻》や《竹取物語絵巻》といった絵巻物をピックアップ。紙を巻き取ることで話が展開していくといった、現代でいうマンガやアニメーションに近い表現がこの時代に存在していたことにも改めて驚かされる。
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比叡山の僧侶に懲らしめられてボロボロになった是害房を日本の天狗が介抱している。ここで描かれている入浴シーンは日本で現存する最古のものだという
とりわけ物語の情景がダイナミックに描かれた屏風絵ではその物語の世界観に没入するような鑑賞体験も演出されている。ここでは、本展のメインともいえる三大物語屏風《源氏物語図屏風》《伊勢物語図屏風》《平家物語・大原御幸図屏風》も一堂に会しており、見応えがあるものとなっている。
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『源氏物語』における代表的な16つのシーンをダイジェスト的に描いた屏風。細やかな宮廷行事や登場人物の生々しい姿が描かれているのは、風俗画の名手岩佐又兵衛の工房ならではだ
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のちの妻となる若紫を覗き見る源氏の姿も
同じく第3展示室に展示されるのが、日本の歴史や神話、仏教主題、伝説などをテーマに描かれた「れきし絵」だ。明治時代に国家意識の高まりもあり流行したこのジャンルは、当時こそ緻密な歴史考証を踏まえて描かれてきたものの、大正時代に入るにつれて作者の主張を代弁するキャラクターとしての意味合いが増していった。現代において数多く存在する日本史をテーマとした創作物にはこういった歴史的背景もあるのかもしれない。
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また、第4展示室では、日本近代洋画の父・黒田清輝の没後100年の節目として特集展示「没後100年 黒田清輝と住友」が同時開催中だ。『平家物語』の悲恋で知られる京都の清閑寺を舞台に描かれた《昔語り》(空襲で焼失)を通じて、黒田清輝と住友家第15代当主であった住友吉左衛門友純(号:春翠)の交流を取り上げている。現存しない《昔語り》の下絵やオイルスケッチを見ることができる貴重な機会とも言えるだろう。
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