アジアでは韓国が2009年に韓国コンテンツ振興院を設立し、国を挙げてソフトコンテンツを世界へ売り込でいる。その結果は映画や音楽の世界における韓国の存在感の高さに現れていると言えるだろう。またヨーロッパでは英国が2030年までにクリエイティブ産業を500億ポンド成長させるビジョンを明らかにし、フランスも「フランス復興計画」として1000億ユーロの投資計画の2パーセントを文化に割り当てるなど、各国がソフトパワーの強化に取り組みを見せている。
こうしたなか、日本は23年3月に文化芸術推進基本計画(第2期)を策定。文化庁の文化経済部会では「文化と経済の好循環」を実現させることを目指している。
1月30日には、文化経済部会での議論を踏まえた文化庁主催のシンポジウム「発見される日本から売り込む日本へ」が開催。都倉俊一文化庁長官は、「日本は有形無形の貴重な文化財があり、ポストコロナでインバウンドが訪れている」としながら、「日本は韓国ほど国がコンテンツの世界発信に取り組めてこなかった。国が総力をあげ、基幹産業として文化産業に取り組んでいきたい」と強調。文化庁がソフトパワーを世界に売り込むと意気込みを見せた。
日本の人口は減り続けており、21世紀半ばには約9000万人まで減ることが予測されている。文化経済部会座長も務める國學院大學の吉見俊哉教授は、「人口と国力は相関する」として、日本の産業は量的な成長ではなく、質を成熟させることが重要だと指摘。「数値がはっきりしているものは手段が組み立てやすいが、文化はそうではない。わからないからこそイノベーティブになるし可能性がある。ただし社会の理解が足りていない」と話す。
またファッションジャーナリストで伝統工芸開発プロデューサーの生駒芳子は、工芸産業が年々右肩下がりになっているいっぽうで、ラグジュアリーブランドや海外からの需要は高まっているという現状に着目。「日本は企業による文化支援が弱く、国の支援が必須」と訴えた。
シンポジウムの主題は「発見される日本から売り込む日本へ」だが、誰が主体となり文化を売り込むのかははっきりしていない。まずはその責任の所在やリーダーシップを明らかにすることが求められるだろう。パネリストからは、省庁が縦割りにならず、横断的な機関をつくるべきという声も上がった。