「Second Genesis(第二創業)」を掲げ、「JINS」ブランドの刷新に取り組む株式会社ジンズホールディングスが、東京・千代田区の神田錦町に新社屋をオープンさせた。
ジンズは昨年、飯田橋の巨大ビルから本社機能を移転。再開発による解体が決まっている9階建てのビル1棟をまるごと借り上げ、新たな拠点とした。同社代表取締役CEOの田中仁によると、この移転は「自分たちがベンチャーであることを再認識し、新たな挑戦を行うマインドを取り戻すため」だという。内部のフルリノベーションを手掛けたのは新進気鋭の建築家・高濱史子。「壊しながらつくる」を設計コンセプトに掲げた空間がつくり出された。
なかでもその大きな特徴はアートだ。アートコレクターとしても知られる田中は、群馬・前橋にあった老舗ホテルをリノベーションした「白井屋ホテル」を開業させた人物であり、アートへの造詣も深い。この新社屋には「美術館×オフィス」をコンセプトとしたホワイトキューブのようなギャラリーが配置された。
ギャラリーフロアの展示監修を行うのは、金沢21世紀美術館館長の長谷川祐子。同フロアには複数の商談室が配置されており、ビジネスの交渉とアイデアの交換のための「エネルギーと感性を充填する準備空間」として位置付けられている。一般には公開されないものの1年に2回の展示替えを予定。商談の場所でもあることを加味し、環境に溶け込むような展示を目指すという。
初回の展示作品は、立石従寛・松田将英・保良雄による共作《Gravitation》。谷川俊太郎の詩集『二十億光年の孤独』の一節からインスピレーションを得たというこの作品。落下して割れたカップ&ソーサーの破片が仮想空間でふたたび出会う物語が、複数台のLEDモニターに投影された映像で展開するとともに、割れた陶器そのものも展示されている。
長谷川はこの3人による作品について、「NFTやテクノロジー、オーディオヴィジュアルを駆使する彼らの創造は、若手育成を重視するJINSの企業方針や視点につながる」と話している。
なおこの新社屋には、5階の執務フロア(非公開)に室内の空気を浄化することを目的とした植物によるろ過システム「Fabbrica dell'Aria®︎(ファブリカ デラリア)」も設置。フィレンツェ大学のステファノ・マンクーゾ教授が率いる国際植物神経生物学研究所の実験結果をシンクタンク「PNAT(ピナット)」が実用化したもので、長谷川はこのろ過装置もひとつのアートととらえ、新社屋の肝として取り入れたという。