「TRAIL BRAKING」SHINSAKU DW 作品展(OFS GALLERY)レポート。カーレーサーであり、小麦農家でもある作家の視点に注目

東京都・池尻のOFS GALLERYで、北海道を拠点に活動する現代美術家・SHINSAKU DWによる作品展「TRAIL BRAKING」が開催中。会期は2月10日まで。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より

 東京都・池尻にあるOFS GALLERYで、北海道を拠点に活動する現代美術家・SHINSAKU DWによる作品展「TRAIL BRAKING」が開催中だ。会期は2月10日まで。

 SHINSAKU DWは北海道帯広市生まれ。板状のアルミニウムの上に銀色のペイントを使って描いた2つの抽象絵画を裁断し、それを交互に入れ替え並べ直すことで、また新たな2つの作品を生み出すという制作スタイルを長く続けてきた作家だ。おもにクリフォード・スティルなどの抽象表現主義やフランク・ステラに代表されるミニマリズムの影響を受けたと語っており、その思想を踏まえたうえで、自身にとっての「絵画のあるべきすがた」を模索し続けている。

展示風景より

 同ギャラリーで2023年に初めて開催された個展「404 NOT FOUND」から約1年8ヶ月ぶりとなる同展では、SHINSAKU DWがキャリア初期に多く手がけていた「シェイプト・キャンバス」の考え方に立ち返って制作した、菱形の作品がメインに展示されている。

 作家であることに加え、トヨタのワンメイクレースに参加するドライバーであり、小麦農家でもあるといった多面的な姿を持つSHINSAKU DW。タイトルの「TRAIL BRAKING」とはレース用語でもあり、「自身でつくり通ってきた痕跡を壊し、新たな道を切り拓いていく」(TRAIL BREAKING)といった作家の考えを示したものでもあるという。

展示風景より、《Some Other Time Ⅵ》。「ニュートラルな素材を使いたい」とアルミ板を使用して制作を行うことが多いSHINSAKU DW。それは、北海道に移住してきた家族の4代目であることから、その地にルーツのある素材にしっくりこないという理由があるようだ

 今回初の試みと言えるのが、北海道在住の写真家・安永ケンタウロスとのコラボレーションだ。株式会社アマナに勤めていたという経歴を持つ安永が、SHINSAKU DWの多面的な姿をそれぞれのフィールドを撮影することで可視化。それらの写真は、作家の制作に対する思考を具象として表すようでもあり、抽象的な展示作品との補完関係を感じられる構成もユニークだ。

 なお、今後の作家在廊日は2月1日〜3日、2月8日〜10日となっている。足を運ぶ際にはぜひ参考にしてみてはいかがだろうか。

展示風景より、手前は農業で用いる「プラウ」という農機具の一部。SHINSAKU DWを構成する要素を示すレディメイドとも言える
展示風景より。左からSHINSAKU DWがフィールドとする小麦畑、工房、レーストラックが写し出されている

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