フランク・ステラが美術史に残したものとは何か。「見ること」を追求したアーティスト
今年5月に87歳でこの世を去った現代美術の巨匠、フランク・ステラ。抽象表現主義を牽引した作家の功績を、『絵画の解放: カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化』著者で東京大学大学院総合文化研究科教授の加治屋健司が振り返る。
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2024年5月4日、20世紀アメリカを代表する画家フランク・ステラが亡くなった。享年87歳。抽象絵画を極限まで押し進めて、絵画の形態と構造に関する様々な課題に挑戦し続けた画家であった。
ステラは、1936年マサチューセッツ州ボストン市郊外で生まれた。名門フィリップス・アカデミーを卒業後、プリンストン大学で歴史学を専攻しつつ、美術史と美術を学んだ。大学では、後に美術史家・美術批評家となるマイケル・フリードと知り合い、交流を深めた。
58年に大学を卒業すると、ステラはニューヨークに移り、絵画制作に取り組んだ。最初にかたちとなったのは、キャンバスの外形を反復するストライプを黒のペンキで描いた「ブラック・シリーズ」(1958–60)であった。当時は個性豊かで奔放な筆触からなる抽象表現主義絵画が全盛の時代であり、ステラの抑制的で即物的な絵画は、新しい時代を告げる絵画として注目を集めた。翌59年には早くも、ニューヨーク近代美術館の「16人のアメリカ人」展に、ジャスパー・ジョーンズやロバート・ラウシェンバーグとともに選ばれて話題となった。このときステラは弱冠23歳だった。
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出典=MoMAウェブサイト(https://www.moma.org/collection/works/80316?artist_id=5640&page=1&sov_referrer=artist)