地域に根付くアートを掘り起こし、光らせたい。「ルーツ&アーツしらおい」4年目の挑戦【3/4ページ】

地元在住の作家や白老をテーマにした作品が多数展開

  このほか白老駅から徒歩圏内の4か所でも展示と活動が展開され、そのうちの3ヶ所では、地域在住の作家やこの地域を具体的なテーマとして掲げた作品が発表された。

 地元作家として2年目の参加となる田湯加那子は、1990年代後半から本格的に絵を描き始め、各地のアールブリュット展に参加してきた。昨年は「田湯加那子の軌跡」と題し、絵を描くきっかけとなった小学生時代の作品から現在まで約200点を出品した。

 今年はまたたび文庫という書店で、田湯が描いてきた膨大なスケッチブックや支持体となった書籍や写真集の表紙と裏表紙が展示された。

田湯加那子「No Message」展示風景より。起きている時間のほとんどを制作に費やす田湯のスケッチブック
撮影=BY PUSH 高田賢人

 いずれの表紙、裏表紙にも、植物のようにも幾何学的なコンポジションのようにも見える、共通性のあるフォルムが描かれている。ハンディキャップを持つ田湯がなぜこのような絵柄を描いているのか言語を介して知ることは難しいが、自身の大切な決め事、あるいは何かのメッセージのようにも見てとれた。

田湯加那子「No Message」展示風景より。中央のテーブルでは実際にスケッチブックを手に取って中身を見ることもできた。写真集をベースに上から色鉛筆でタッチを描いたものもあった
撮影=BY PUSH 高田賢人

 同じ会場では、このほか5人の映像作家が白老町に滞在して各々制作した短編映画が上映された。制作者のフィルターを通して現れる白老の人々や風景は多種多様。これらの映像を比較することで地域をより深く理解する契機となる展示だった。

5人の映像作家による「SHIRAOI SHORT SHORT – ドキュメンタリーで紡ぎ出す、5つの白老の物語。」より
撮影=BY PUSH 高田賢人

 2024年4月にビール醸造所併設のギャラリーとしてオープンしたbrew galleryでは「樽前山を望んで」と題し5名が参加。

 樽前山は活火山で特徴的な溶岩ドームがあることで知られ、このエリアに住むアーティストに多くのインスピレーションを与え続けてきた。

 今回、改めて山を見つめ、樽前山そして山という存在の魅力を見出していこうと、白老生まれの前田育子(陶芸)をはじめ、隣接する苫小牧に住んだことがあり山に親しんできたという河合春香(絵画)やjobin.(立体)、このほかアキタヒデキ(写真)、風間雄飛(版画)が展示を行った。

「樽前山を望んで」展示風景より、風間雄飛《やまやま》。様々な山の風景の中に、樽前山が織り込まれている
撮影=BY PUSH 高田賢人
「樽前山を望んで」展示風景より、アキタヒデキ《汽水域のトニカ》。現在、樽前山の登山道が一部閉鎖されており登山が叶わず、アキタは川の流れを追いながら撮影をしていった
撮影=BY PUSH 高田賢人
白老在住の工芸作家16組による「白老の手仕事展」がしらおい創造空間「蔵」で開催中。アイヌ刺しゅう、木彫り、大漁旗を用いた作品、陶芸など、さまざまな作品が集結。アイヌ刺しゅう体験も土日祝に実施された
アイヌ刺しゅう体験の様子

編集部

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