東京・天王洲のYUKIKOMIZUTANIで、ヤビク・エンリケ・ユウジの個展「JARRING HARMONY」が開催される。会期は9月20日〜10月19日。
ヤビクは1997年にブラジルのサンパウロで生まれ、11歳の時に日本に移住。一時期は文化服装学院で服飾を学んでいたが、2017年からコラージュを用いた表現活動を本格的に始めた。19年にはW+K+ Galleryで初の個展「FIRST IMPRESSION」を行い、22年にはYUKIKOMIZUTANIで自身最大規模の個展「AFTERTHOUGHT」を開催した。その作品は直感的な表現スタイルで、東京のアート・ファッションシーンで大きな注目を集めている。
ヤビクの作品には、ブラジルと日本というふたつの異なる文化背景が色濃く反映されている。多民族国家であるブラジルでは異なる人種や階級のあいだで文化的な衝突を経験し、日本では伝統と革新の価値観がぶつかり合うなかで育ってきた。これらの経験が彼の作品に影響を与え、彼は制作過程におけるさまざまな事象を「衝突」ととらえている。
例えば、光沢のある既製の金属(メッシュワイヤー、チェーン、板)と廃棄寸前の古紙、旧来のモノクロ・シルクスクリーンと最新の2.5次元プリント、古雑誌から切り抜いた人と人の「衝突」を映した写真を用いるなど、あらゆる「衝突」を作品にしている。これらの要素は「芸術作品と消耗品」、「娯楽と効用」、「大義と機能的定義」の境界を曖昧にし、社会が二元的な価値観に縛られることに対して挑戦する姿勢を示している。
今回の個展「JARRING HARMONY」では、ヤビクが作品に込める「不協和音」の再認識と再解釈を試みる。その創作の原点であるスケートボードカルチャーに立ち返り、「DIY」「即興性」「反体制的な精神」「無秩序性」といった共通の特徴を作品に取り入れつつ、現在挑戦している建築的な要素も加え、新たなコラージュアートの境地を目指している。
伝統的な枠組みを超え、見る者に強い印象を与えるヤビクの作品。彼が持つユニークな視点とその表現の進化を垣間見る絶好の機会となる本展に足を運んでみてはいかがだろうか。