2020.11.30

銀座の画廊21軒が連携。今年の「Xmasアートフェスタ」はここに注目

銀座界隈にスペースを構えるギャラリーが2009年から開催している「Xmasアートフェスタ」。今年で第12回を迎えるこのイベントの注目ポイントとは?

 
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 数多くのギャラリーが軒を連ねる銀座。このエリアのギャラリーが連携して2009年から開催しているのが「Xmasアートフェスタ」だ。

 今年で第12回を数える「Xmasアートフェスタ」は、「洋服やバッグを選ぶような感覚で自分好みのアートを選んでほしい」という思いから行われているもので、21軒のギャラリーがそれぞれ趣向を凝らした企画を開催する。ここではそのなかからとくに注目したいものをピックアップして紹介したい。

永井画廊

 永井画廊では、「エロス」という普遍的なテーマによる三人展「大槻透・伊東明日香・小池真奈美 三人展 ―エロスへの誘いー」(12月11日〜22日)を開催する。

 古来、多くの画家がエロスをテーマに名画を生み出してきた。本展では、エロスへの憧れを絵画に託す大槻透、女性性をテーマとして湧き上がる思いを描写する伊東明日香、出産を機に母性にめざめ、子への深い愛情を表す小池真奈美が、それぞれのエロスと向き合った絵画を見せる。

左から、大槻透《Femme fatale》、伊東明日香《高潔》、小池真奈美《おっぱい》 ※各部分

ギャラリー広田美術

 ギャラリー広田美術では「漆原夏樹・寺内誠 二人展」(12月11日〜26日)を開催。漆原夏樹は1977年生まれで日本画を専攻、寺内誠は1980年生まれで油画を専攻した作家だ。

 両者の共通点は、3次元世界を拠りどころとし、それを超えたものを描き出そうとする試みにある。描き出そうとしているものとアプローチの仕方は違うものの、気配や雰囲気など、誰もが経験し理解しているが眼には見えないものを作品として昇華させる。本展では、水彩やアクリルなどの作品も含めて、それぞれ約10点の新作を展示予定。

寺内誠 fluid 15F パネルに綿布、油彩

ギャラリー上田

 ギャラリー上田は、漆と螺鈿で生命力溢れる花々や野菜を制作するアーティスト・荻野令子の個展「漆─炎と水─」(12月7日〜26日)を開催する。

 草月美術館やサントリー美術館、国際交流基金などに作品が収蔵されている荻野。その作品はオブジェ、蓋物、ジュエリーなど幅広い。軽く丈夫な漆は飾るだけでなく生活のなかで使うこともできるのが特徴だ。なお作品は12月3日より、PJ Arts Tokyoにてオンライン先行公開される。

荻野令子 オリエンタル・リリー 乾漆(麻布、和紙、漆)、螺鈿

至峰堂画廊

 テンペラと油彩を用いた古典絵画技法で精緻な作品を描き上げる山田啓貴。至峰堂画廊ではその個展を楽しみたい。

 ルネサンス時代の絵画に用いられた技法によって、「現代を生きる作家が見てきたもの」を描く山田。懐かしい道具やおもちゃなど、ネットオークションやフリーマーケットで手に入るものを実際に入手して作品として描くという手法を取っており、モチーフが静かに画面に置かれたような作品は、鑑賞者がそれぞれの記憶を作品に投影することができるだろう。

山田啓貴 笑みが溢れる時 油彩・テンペラ

銀座柳画廊

 銀座柳画廊では、同画廊2回目となる喜多尾ボンタン礼子の個展(12月11日〜19日)を開催する。

 1950東京生まれで現在はフランス在住の喜多尾ボンタン礼子は、自然と人間、詩情をテーマに作品を描いてきた。本展では、長年培ってきた静物画を中心に、近年挑戦し続けているイソップ物語や神話の世界に静物画を合わせた独創的な作品を含めた新作油彩作品33点を発表する。

喜多尾ボンタン礼子 復活

靖山画廊

 靖山画廊では、不安定な時世を迎え、長年続けてきた恒例の「たいせつなもの展」を改め、例年とは異なる主旨の「蟻のひと噛み」展(12月11日〜22日)を開催する。

 本展に参加するのは、日本画・洋画・彫刻などジャンルを問わず18名の作家たち。小さな存在でも多くの力が集まれば遥かに強大な力を持つものをも倒すことができるという希望を表す「蟻のひと噛み巨象を倒す」という言葉を主題に、各作家がそれぞれの個性を発揮した作品を展示。コロナ禍で困難な時代において、アーティストたちの力を結集する。参加作家は青山ひろゆき、池尻育志、泉東臣、今井清香、奥村晃史、越智俊介、勝田えみ、川崎麻央、熊谷曜志、下平知明、高見基秀、田端麻子、ツジモトコウキ、ハタユキコ、八嶋洋平、谷津有紀、ワタベカズ、戸泉恵徳。

勝田えみ #hashtag 2020

ギャラリーアートもりもと

 伝統的な木彫の技術を修得しつつ、現代の表現を行う石川時彦。ギャラリーアートもりもとではその個展「石川時彦 木彫展」(12月10日〜19日)を見ることができる。

 1958年東京生まれの石川は、1976年に齋藤高徳に師事。本州各地の古寺・名刹、神社など仏像彫刻、社寺建築彫刻の制作・修理に従事した後、98年に独立し鎌倉に工房を開いた。古来からある木彫技術を基としながらも、プロレスに興じる鬼たちといったユニークな表現に注目だ。

石川時彦 戦鬼・ばっくどろっぷ