「アートのある暮らし」を想像しよう。京都の町家で「呼吸する庭」が開幕

京都市下京区にある築約140年の町家。ここを宿泊施設としてリノベーションした庵町家ステイ「筋屋町 町家」で、若手作家3人による展覧会「呼吸する庭」が開幕した。会期は1月31日まで。

会場風景

 京都を象徴する建築である町家。狭い間口や奥に伸びた空間、そして坪庭などが特徴的なこの建物を舞台に、3人の若手作家による企画展「呼吸する庭」が始まった。

 会場となるのは、築約140年の町家を宿泊施設にリノベーションした庵町家ステイ「筋屋町 町家」。庵町家ステイは、京都市内で14棟の町家宿泊施設を運営しており、本展会場はそのなかでも最大の広さを誇る。もともと豆問屋だったという本展会場。広い玄関土間を抜けると、そこはもう展覧会の会場だ。

会場風景より、中村萌《keep yourself alive》(2019)

 本展の参加作家は、ともに京都造形芸術大学大学院を修了した品川亮、品川美香、中村萌の3人。

 和紙と墨をベースにした作品を手がける品川亮は、1987年大阪府生まれ。イタリアやジュネーブといった海外での生活経験を持つ品川は、自らの表現手法を「日本画」ではなく「日本絵画」だと語る。「日本人である自分が描けるものとはなんなのか。日本の伝統的な絵画を、いかに現代のものにアップデートできるのかを考えています」。

会場風景より、品川亮《untitled》(2019)

 1988年熊本県生まれの品川美香がテーマとするのは、「人間とは何か」という問いだ。幼い子供をモチーフにした作品だが、その表情からは感情を読み取ることができない。「子供は何を考えているかわからない面があり、可愛らしさと同時に恐ろしさも感じます。その二面性を表現するとともに、人間とはいったいどういう存在なのかを考えるきっかけにしたいです」。

会場風景より、右は品川美香《Prologue》(2019)

 アクリルとラメを使い、独特のテクスチャーを生み出す中村萌は1991年京都府生まれ。なんらかのモチーフをドローイングし、それをペインティングに展開するという手法で作品を生み出している。「絵画が持つ空間性と時間性について考えています。スピード感がある現代美術の世界において、多くの時間をとどめることができる絵画の可能性を拓けたら」。

会場風景より、中村萌《Mint》(2018)

 今回のような空間での展示はほぼ未経験だったという3人。展示するうえでもっとも考慮したのが、いかに作品を町家という生活空間に溶け込ませるかという点だという。居間や床の間、階段の踊り場、あるいはベッドルームなど、どの場所にどの作品を展示するのがもっとも自然なのか。作家同士で話し合いを重ね、会場をつくりあげていった。

 2フロアの会場にはそこかしこに作品が展示され、来場者がそれぞれの「アートのある暮らし」を想像できるような構成となっている。畳に座り込んで鑑賞することもできるので、ゆっくり作品と対峙する時間を味わってほしい。

2階の大空間

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