今年2月、カタールで初開催された「アート・バーゼル・カタール」の熱気が冷めやらぬなか、アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃を契機に中東情勢は急速に緊迫化し、世界は再び不安定な局面へと突入した。原油価格の高騰や輸送コストの上昇といった影響が広がるなか、アジア最大級のアートフェアである「アート・バーゼル香港」の2026年版が開幕した。
本年のアート・バーゼル香港には、41の国・地域から240のギャラリーが参加。開幕に先立ち、香港のローズウッド・ホテルで開催されたウェルカム・レセプションにおいて、アート・バーゼル チーフ・アーティスティック・オフィサー/グローバル・ディレクターであるヴィンチェンツォ・デ・ベリスは、「アート・バーゼル香港は、世界中のアート・バーゼルのなかでも独自の位置を占めている。アジアへのゲートウェイであると同時に、この地域の持つ深みや複雑さ、そしてダイナミズムを映し出す存在であり、国際的なネットワークを接続する重要な役割を担っている」と述べた。そのうえで今年のテーマとして、ローカルとグローバルの実践を横断的に結びつける「コネクティビティ」を掲げ、文化的・商業的エコシステムの接続を強調した。

再評価されるアジアのマーケット
今年3月に発表された「Art Basel and UBS Global Art Market Report 2026」によれば、2025年の中国のアートマーケットは、不動産市場の低迷や消費者心理の悪化といった経済的要因を背景に、前年比1%増の約85億ドルとほぼ横ばいにとどまった。また、より国際志向の強い香港市場は、グローバルな不確実性の影響を受けやすい構造にあることも指摘されている。
こうした状況にもかかわらず、今年の香港のマーケットムードは総じて楽観的だ。その背景には、トランプ政権下のアメリカにおける政策や市場の不透明性が増すなかで、中国および香港の政治・経済環境が相対的に安定し、予測可能性を備えていると受け止められている点があるだろう。
この点について、アート・バーゼル香港ディレクターのアンジェル・シヤン=ルーは「美術手帖」の取材に対し、「中東経由で渡航予定だった来場者がフライトの変更を余儀なくされるなどの影響はあった」としながらも、「多くのコレクターが最終的には来場した」と振り返る。そのうえで、「現在のアジアは比較的安定した状態にあり、このタイミングでアジアを訪れたり、投資や鑑賞の対象として注目する動きが強まっている」と指摘する。

































