「ART SG 2026」開幕レポート。拡張と調整のあいだで形づくられるシンガポールの現在地【2/3ページ】

新イニシアティブ、パートナーシップが示すフェアの拡張

 こうした市場環境のなか、ART SGは今年、当地市場の可能性を広げるべく、複数の新たなイニシアティブとパートナーシップを打ち出した。

 そのひとつが、フェア初となる特設パヴィリオン「SOUTH ASIA INSIGHTS」である。インドおよび南アジアの現代美術に特化した本セクションは、TVSインド・南アジア現代美術イニシアティブの支援によって実現した。ART SGがこれまで主軸としてきた東南アジアの文脈に、南アジアを横断的に接続する新たな試みとして位置づけられる。

ART SG 2026パフォーマンス・アート部門の展示風景

 また、今年は新たにパフォーマンス・アート部門が設けられた点も注目される。絵画や彫刻といった従来のマーケット中心のフォーマットを超え、実験的で学際的な表現を積極的に取り込もうとする、ART SGの方向性が示された。

 会場外プログラムとしては、上海のロックバンド美術館と共同で「Wan Hai Hotel: Singapore Strait」を開催。市内のザ・ウェアハウス・ホテルを会期中の展示・イベント空間へと転換し、フェアと都市空間、さらには美術館プログラムを横断する取り組みが行われた。

「Wan Hai Hotel: Singapore Strait」の展示風景

 これらの動きについて、ART SG共同創設者のマグナス・レンフリューは次のように語る。「ART SGは、非常に広い地理的範囲から人々が集まるプラットフォームであり、結節点でもある。私たちは、様々な組織やコミュニティをその軌道に引き寄せ、彼らが行っている意義ある活動を可視化したいと考えている。それは同時に、ART SG自身がそれぞれのコミュニティにとって、より意味のある場所になっていくことでもある。フェアを“部分の総和以上の存在”にしていきたい」。

 レンフリューはまた、来場者の動きにも変化が見られると指摘する。例えばART SGを目的にシンガポールを訪れた後、昨年12月に開館したバンコクの新美術館Dib Bangkokをはじめ、東南アジア各地のアートシーンへ足を延ばす動きが目立ち始めているという。

 「シンガポールのアートシーンは、いま少しずつ独自のリズムを獲得しつつあるように感じる。ART SGは、シンガポール単体の市場形成にとどまらず、より広いインド太平洋地域を視野に入れたネットワーク型フェアとしての役割を模索している」。

ART SG 2026の会場風景

編集部