アート・ジャカルタ2025レポート。東南アジア最大市場の現在地【2/3ページ】

 ジャカルタのギャラリーシーンのなかでも注目を集めたのが、今年4月に設立されたAra Contemporaryだ。同ギャラリーはフェアで、東南アジア出身の20名以上のアーティストによる作品を展示。ディレクターのメーガン・アーリンは、インドネシアのコレクターについて「とても情熱的」と語る。「この国の収集シーンをひとことで表すなら、『誰にでも何かがある』ということ。多様で活気に満ちています」。

 台湾・台北を拠点とするYIRI ARTSも、今年6月に初の海外拠点としてジャカルタにギャラリーを開設した。オーナーの黄禹銘(オートン・ホァン)は当初、中国・上海への進出を検討していたが、経済環境の悪化を背景にジャカルタへの展開を決断したという。「インドネシアでギャラリーを運営するコストは、上海の約5分の1。でも作品の販売価格は同じです。経営的なプレッシャーが少なく、より理想的な活動ができる」と黄は話す。

YIRI ARTSのブースより Photography courtesy of Art Jakarta

 アート・ジャカルタへの参加は今年で4回目となるYIRI ARTS。黄によれば、販売状況は年々好調で、インドネシアのコレクター層の拡大スピードは非常に速いという。「コレクションを始めて1年ほどの層が多く、その段階のコレクターは新しい表現に対して非常にオープンです。さらに、ここでは“学ぶ姿勢”を持つコレクターが多く、自分のコレクションの文脈を構築し、それを他者と共有することにも積極的です」。

 同フェアは、国内市場の発展にとどまらず、国際的な連携にも積極的に取り組んでいる。今年のフェアでは、韓国文化体育観光部との協働によって「Korea Focus」セクションが実現。12の韓国ギャラリーによる厳選された作品が紹介され、来場者の注目を集めた。

「Korea Focus」セクション Photography courtesy of Art Jakarta

 また、日本からも大きな動きがあった。株式会社The Chain Museumが運営するアートコミュニケーションプラットフォーム「ArtSticker」は、今年のアート・ジャカルタのメインパートナーを務めた。9月末からArtSticker上でフェア参加ギャラリーの一部作品を販売するほか、会期中のVIPプログラムをサポート。さらに、日本から10人以上のコレクターをジャカルタへ送り込み、フェアの国際化を後押しした。

 ArtSticker以外にも、毎年秋に京都で開催される「Art Collaboration Kyoto(ACK)」が昨年からアート・ジャカルタと提携。双方のフェア会期中に、それぞれ約10名のコレクターを相互に派遣する取り組みを進めている(航空券はコレクター負担、宿泊はフェア側が提供)。今年はこの仕組みをさらに拡大し、ArtSticker、ACK、Art Fair Philippines、Art Taipei、Art 021、Larry’s Listなど、計8つの機関・フェア・個人とのコレクター交流プログラムを実施。合計80〜100名規模のコレクターがジャカルタを訪れたという。