10月20日にクリスティーズ・ニューヨークで開催されたアン&ゴードン・ゲティ・コレクション「Volume 1 | Important Pictures and Decorative Arts」イブニングセールで、ポーラ美術館がアメリカ出身の印象派女性画家メアリー・カサットの《Young Lady in a Loge Gazing to Right》を落札。落札額は約750万ドル(約11億円)で、アーティストのオークションにおける過去最高額を更新した。
アメリカの慈善家でありアートコレクターのアン&ゴードン・ゲティ夫妻が長年にわたって収集してきた約1500点の美術品は、10月25日まで4回のオークションと6回のオンラインオークションにわたって競売される。事前の予想落札総額は1億8000万ドルと推定されており、すべての収益は、芸術と科学団体の支援を目的とするアン&ゴードン・ゲティ財団の資金に充てられるという。
その第1回目のオークションとなる今回のイブニングセールでは、印象派の絵画からイギリスの家具や中国の美術品まで、幅広いジャンルの作品約60点が出品。すべての作品が落札され、約7940万ドル(約120億円)の売上高を達成した。
トップロットであるカサットの作品のほか、フランスの画家であるジャック=エミール・ブランシュの《Vaslav Nijinsky in 'Danse Siamoise'》は、最低予想落札額100万ドルに対して270万ドル(約4億円)で落札され、アーティストのオークションレコードを更新。また、ジュール・バスティアン=ルパージュの《Portrait de Sarah Bernhardt》も最低予想落札額の4倍以上となる228万ドル(約3億4300万円)で落札され、新たなレコードを記録した。
絵画作品のほか、イギリスの家具職人ウィリアム・ヴァイルによるキャビネットが60万ドルの最低予想落札額に対して270万ドル(約4億円)で落札。中国清時代の鶴型の香炉《A Pair of Massive Chinese Cloisonné and Champlevé Enamel Crane-Form Censers》は最低予想落札額の20倍以上となる162万ドル(約2億4400万円)で落札された。
また、ジョヴァンニ・アントーニオ・カナール(通称、カナレット)の絵画《Venice, the Grand Canal looking East with Santa Maria della Salute》は、オークション開催前にプライベートセールで取引。サンフランシスコ美術館の名誉理事長であるダイアン・ウィルシーによって同館に寄贈されたという。
クリスティーズの副会長でセールスキュレーションのアメリカ大陸担当であるジョナサン・レンデルは声明文で、今回の落札結果について次のようにコメントしている。
「今晩のセールは歴史的なものであり、アンとゴードン・ゲティの絶妙なセンスと想像力を証明するものとなっている。また、ゲティ邸を再現した画期的な巡回展を通じ、アメリカでもっとも素晴らしいインテリアの数々を世界中の人々と共有できたことを誇りに思う。並外れたセールスウィークとなることを心待ちにしている」。
なお、オールドマスターや19・20世紀の絵画、イギリスやヨーロッパの家具、陶磁器、テキスタイル、中国やアジアの美術品など多彩の作品が出品される残りのオークション3回は、10月21日〜23日に開催。オンラインオークションは10月25日まで行われている。