2022年上半期、クリスティーズが33億ポンド(約5400億円)/41億ドル(約5700億円)の総売上高を達成。前年比で34パーセント増(ポンド)/18パーセント増(ドル)となっており、2015年以来最高の数字を記録した。
そのうち、オークションによる売上高は28億ポンド/35億ドル。プライベートセールの数字は5億ポンド/6億ドルで、過去5年間の上半期では2番目の売上高となった。
クリスティーズのCEOギヨーム・セルッティは7月12日にオンラインで行われた記者会見で、「このパフォーマンスは、アートマーケットが非常に弾力的であるという事実が説明できる」とし、次のように述べている。
「この結果は、私たち自身の効率性の結果でもある。そして、過去5年間にクリスティーズで行った変化や適応が、大成功を収めたことは間違いないだろう。今年の上半期に、私たちはビジネスモデルを改善した。会社をよりデジタルな活動に向け、チームを強化し、販売コンセプトをモダナイズし、オークションからプライベートセールを通じた金融サービスまで、お客様に提供できるサービスの幅を広げた。これらすべてが、2022年上半期のクリスティーズの好調な業績を物語っている」。
今年上半期、全世界のオークションで落札されたもっとも高額な作品12点のうち、トップロットを含む7点がクリスティーズで落札。1億9500万ドル(当時のレートで約253億円)で落札されたアンディ・ウォーホルの《Shot Sage Blue Marilyn》は、20世紀の作品として史上最高額、オークション史上では2番目の高額作品となった。
また、トーマス・アンド・ドリス・アマン、アン・H・バス、ユベール・ド・ジバンシィなどのコレクションから出品された作品も目覚ましい成果を挙げた。
セルッティによれば、今年上半期の顧客のうち30パーセントが新規顧客で、34パーセントはミレニアル世代の顧客。また、上半期に開催されたチャリティーセールでは約4億4000万ドル(約611億円)を調達し、そのうち1370万ドル(約19億円)をウクライナへの支援に充当したという。
地域別に見ると、アメリカ大陸の顧客が44パーセント、ヨーロッパ、中東およびアフリカ(EMEA)が34パーセント、アジア太平洋(APAC)が22パーセントの売上高を占めた。アメリカ大陸とEMEAの顧客による購入額は、それぞれ32パーセント増と10増となった。APACではパンデミックに関する規制が続いているため、上半期は9パーセント減の結果となったが、5月にニューヨークで開催された21世紀イブニングセールや、パリのジバンシィ・コレクションとロンドンのシャガール・コレクションのセールでは、APACの顧客は約3割の落札額に貢献した。
クリスティーズ・アジア・パシフィック社長のフランシス・ベリンは、「下期を見据えると、引き続き様々な計画をしている」と話す。キュレーションされた展示・販売や、販売目的ではない展示を継続して行うことで、収集の傾向をつくり、また、APAC内の重要な地域で関連プログラムを引き続き開催するという。
日本市場はどうだったのか? 「美術手帖」の質問に対し、ベリンはこう答えた。「日本は私たちにとって、つねに非常に重要な国。長年にわたって売り手側がやや強かったが、買い手側も非常に活発だった。なので、私たちは日本のコレクターと関わり、彼らのコレクションの旅をサポートし続けたい」。
記者会見の最後、クリスティーズのグローバル会長であるジュシー・ピルカネンは次のように述べた。
「重要なのは、アートマーケットがこれほどまでに成長し、クリスティーズのあらゆるカテゴリーにコレクターの数が増えているのを、私はこれまで目撃したことがないということだ。それにはふたつの重要な理由があると思う」。
「まず、入札者の皆様は、私たちのライブポータルを通じて、世界のどこにいても、私たちが販売するすべての品物に関する情報を入手することができる。そしてもうひとつは、オークション会場の盛り上がりは、専門家集団がデジタル手段で直接お客様とコミュニケーションをとることで生まれるということだ。そのおかげで世界はいろいろな意味で小さくなってきている。パンデミックは、私たちにたくさんの素晴らしい教訓と、コミュニケーションの素晴らしさを教えてくれたのだろう」。