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2020.11.12

ホックニーの風景画大作がフィリップスに出品。予想落札価格は約37億円

1980年に制作され、デイヴィッド・ホックニーのパノラマ風景画シリーズの原点とも言える作品《ニコルズ・キャニオン》(1980)が、12月7日にフィリップス・ニューヨークで開催される20世紀現代美術イヴニング・セールに出品。予想落札価格は3500万ドル(約36億7900万円)となる。

デイヴィッド・ホックニー ニコルズ・キャニオン 1980
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 1960年代にアメリカ西海岸のプールのある邸宅や室内風景をモチーフにした作品を描き、80年代よりパノラマ風景画を制作し始めたデイヴィッド・ホックニー。そのパノラマ風景画シリーズの原点とも言える作品《ニコルズ・キャニオン》(1980)が、12月7日にフィリップス・ニューヨークで開催される20世紀現代美術イヴニング・セールに出品。予想落札価格は3500万ドル(約36億7900万円)と推定される。

 80年秋、ニューヨークからロサンゼルスに戻ったホックニーは、都市と自然が混在する街の環境からインスピレーションを受け、新たな風景画への取り組みを始めた。当時、ホックニーは2点の風景画大作を制作し、そのうちのひとつである《マルホランド・ドライブ:スタジオへの道》(1980)は現在、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)の永久収蔵品となっている。そしてもうひとつの作品が、今回個人コレクションから出品される《ニコルズ・キャニオン》だ。

デイヴィッド・ホックニー マルホランド・ドライブ:スタジオへの道 1980 出典=LACMAのウェブサイト

 同作を完成させたあと、ホックニーは販売するのではなく、自ら収蔵することを決意。しかし、その直後にパリのクロード・ベルナールのギャラリーでピカソの小品に一目惚れし、その作品を入手するため、《ニコルズ・キャニオン》ともう1点の作品でアンドレ・エメリッヒ・ギャラリーと取引。82年には同作は個人コレクターに購入され、以降約40年のあいだ同じコレクションに属していたという。

 フィリップスの副会長で20世紀・現代美術部門の共同責任者であるジャン=ポール・エンゲレンは、同作は「間違いなく、これまでにオークションに出品されたなかで、もっとも重要なホックニーの風景画だ」と評価しながら、次のようにコメントしている。

 「この作品の姉妹版(《マルホランド・ドライブ:スタジオへの道》)は制作後すぐにLACMAに所蔵され、同作も40年近くものあいだ、同じコレクションに所蔵されている。また、同作はホックニーの風景画が3000万ドル以上の価格を認定された初めての作品で、彼の具象的な作品の価格にも匹敵するものだ。この特別な絵画が初めてオークションに出品されるということは、絵画市場が依然として強いことを示している」。

 なお、ホックニーの代表作《芸術家の肖像画―プールと2人の人物―》(1972)は2018年に約102億円で落札され、現存アーティストとして当時の過去最高額を記録。現在でも、絵画系現存アーティストのオークションにおける過去最高額の記録を保持している。今回の作品はどこまで数字を伸ばすのか、注目したい。