ミュシャ美術館が新拠点に移転へ。《スラヴ叙事詩》の恒久展示も

チェコ共和国の首都プラハにあるミュシャ美術館が、同市中心部にあるバロック様式のサヴァリン宮殿に移転。オープンは2025年1月24日を予定している。

サヴァリン宮殿の外観 © Crestyl

 アール・ヌーヴォーの巨匠アルフォンス・ミュシャ(1860〜1939)の作品と生涯を紹介するプラハのミュシャ美術館が、同市中心部にあるバロック様式のサヴァリン宮殿に移転することが発表された。オープンは2025年1月24日の予定だ。

 新たな美術館が拠点とするサヴァリン・コンプレックスは、2021年から建設が進められてきたプラハ中心部の大規模都市開発プロジェクトであり、その全体設計はイギリスの建築家トーマス・ヘザウィックが担当しており、完成は2030年を予定している。

 美術館の舞台となるサヴァリン宮殿は、かつて国立民族学博物館や社交クラブが置かれていたチェコ文化の象徴的な場所であり、今年9月に修復が完了した。その再構築と美術館の設計は建築家エヴァ・イジチュナが率いるAI Designによって手がけられ、宮殿内の約1100平米の展示スペースが一般公開されることとなるという。

サヴァリン宮殿の内部 © Crestyl

 この新しい展示場所への移転は、ミュシャの芸術作品をより多くの人々に紹介するための重要な一歩であると、ミュシャの曾孫であり財団のCEOであるマーカス・ミュシャは語る。旧展示スペースはとくに夏季に混雑が激しく、訪問者数の増加に伴い新しい場所を必要としていた。サヴァリン宮殿の壮麗な歴史的空間は、チェコ文化と結びついたミュシャの作品を展示するには理想的な場所であり、地元の人々や観光客にとっても魅力的な文化スポットになることが期待されている。

 新しいミュシャ美術館では、財団が30年以上にわたって培ってきた展示運営の経験と新たな学術的成果を反映した内容が紹介される。これまで展示されていなかった初期の油絵や手描きのデザインスタディ、またミュシャのフリーメイソンへの関心を示す資料や、その代表作である《スラヴ叙事詩》に関する研究資料など、幅広いコレクションが公開される予定であり、定期的に内容が更新されるという。

左からアルフォンス・ミュシャ《Gismonda》(1894)《La Dame aux Camélias》(1896)《Médée》(1898)

 また、同館の開館にあわせて、アメリカのフィリップス・コレクションや東京の渋谷ヒカリエでの展示、さらには2025年4月に開催される大阪万博でのチェコ代表展示など、世界中でミュシャの作品が再び脚光を浴びる機会が訪れる。

 なお、サヴァリン・コンプレックスには、ミュシャが約17年の歳月をかけて制作した全20点からなる超大作《スラヴ叙事詩》を恒久展示する施設も建設されている。新たなミュシャ美術館と同施設は、ミュシャを愛する世界中の観客にとって必ず訪れる場所となるだろう。

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