アルフォンス・ミュシャによって、約17年の歳月をかけて制作された全20点からなる超大作《スラヴ叙事詩》。この作品を恒久展示する施設の建設が決定した。
同作は、1928年に完成した後はプラハ市に寄贈されたものの、60年代からクルムロフ城で夏期展示されたほかは展示の機会にめぐまれなかった。本来、《スラヴ叙事詩》はプラハ市が恒久展示施設を建設することが条件で寄贈されたものだったが、そうしたスペースが建設されることはなく、ミュシャの孫でありミュシャ財団理事長のジョン・ミュシャがプラハ市を提訴。プラハ市が《スラブ叙事詩》の正当な所有者になったことはないと主張し、昨年12月にはプラハ地方裁判所が訴えを認めていた。
この決定から一転、今年1月にはこの新たな《スラヴ叙事詩》20点を展示する施設の建設がミュシャ財団とプラハ市のあいだで合意。問題解決に向けて一気に事態が動くこととなった。
新たな展示施設は、トーマス・ヘザウィック率いるヘザウィック・スタジオが設計。同スタジオがプラハの中心地で2026年の完成を予定している大規模再開発プロジェクト「サヴァラン」の一部となり、施設全体の中心的な位置づけとなるという。
開発を手がけるCRESTYL社のエグゼクティブディレクター、サイモン・ジョンソンは今回の決定について「私たちは、《スラヴ叙事詩》設置に関するドラマを終わらせ、画家の願いを叶えるためのソリューションを提供する」とコメント。展示面積は約3500平米となり、施設では《スラヴ叙事詩》とともに多くの習作やパステル画、ドローイング、油絵、写真、文書などが展示される予定だという。ジョン・ミュシャは「ここでの展示のユニークさは、私たちのコレクションとの関連性にある。アムステルダムのゴッホ美術館に匹敵する、国際的に重要なユニークな美術館が設立されることになる」と自信を滲ませている。
またジョン・ミュシャは「祖父はこのような彼の傑作の展示を誇りに思うだろうと確信している」としつつ、プラハ市に対する訴訟を取り下げる考えも示している。「なぜなら私の祖父の意志が成就するのだから」。
なおThe Art Newspaperによると、《スラブ叙事詩》はこの施設が完成するまでのあいだ、かつて50年以上展示されていたクルムロフ城に戻されるという。