2022.3.7

森美術館で回顧展開催中のChim↑Pomの実体とは?『美術手帖』4月号の特集は「Chim↑Pom 自由と真実の飽くなき探究」

『美術手帖』4月号の特集は「Chim↑Pom 自由と真実の飽くなき探究」。現在、個展「ハッピースプリング」を森美術館で開催中のChim↑Pom。2005年の結成から、本展の制作プロセスまで、これまでの活動を徹底紹介する。

『美術手帖』4月号
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 Chim↑Pomは2005年、卯城竜太、林靖高、エリイ、岡田将孝、稲岡求、水野俊紀により、東京で結成されたアーティスト・コレクティブ。結成前夜、現代美術家・会田誠のもとに引き寄せられるように集まった6人のメンバーで、エリイ以外は美大出身ではなかったが、新宿や渋谷の路上から、メキシコとアメリカの国境地帯まで、瞬く間に世界各地で「アート」を手がけるようになる。いまや世界の美術館や国際展で作品が紹介される、日本を代表するコレクティブのひとつだ。

『美術手帖』4月号より

 様々な場所で、現地の人々とタッグを組みながら作品を立ち上げるスタイルは、社会的・政治的テーマを扱い、かつ鋭い批評性を持つため、ときには「騒動」のように伝えられることがある。だがサイトスペシフィックであるがゆえに、作品がどのように生まれ、現場で何が起きていたのかは当事者でないとわからない部分も多い。

 特集は、まずパート1で最新個展の制作プロセスをビジュアルで紹介。ロングインタビューでは17年の活動におけるターニングポイントを振り返るとともに、本展準備中において突き当たった課題についても赤裸々に語られている。

『美術手帖』4月号より

 さらに、過去にChim↑Pomと協働したキーパーソンたち10人に取材。それぞれが目撃した作品の実体が、現場視点の貴重なエピソードを交えて語られ、当時の背景とともに代表的なプロジェクトについて追体験することができる。

『美術手帖』4月号より

 パート2では、個々での活動も展開するメンバーの関心事に着目。小田原のどかと卯城の対談では、美術と「公」の関係について、社会学者・上野千鶴子とエリイとの対談では、アーティストとしてのエリイの内面に迫っている。さらにオルタナティブ・スペースも運営するメンバーの卯城、水野、そして久保寛子、涌井智仁、髙木遊が参加する座談会では、キュレーションの現在的な課題について語り尽くされた。

『美術手帖』4月号より

  パート3では3人の論者が、日本及び世界の美術史と、同時代の芸術論的視点から、その活動の定義を試みる論考を寄せている。

 あらゆる角度からChim↑Pomの活動をとらえた本特集。読後に訪れれば、開催中の展覧会もより一層楽しむことができ、理解が深まる特集といえるだろう。