『VOGUE』をはじめとする、ファッション誌で女性を撮り続けたファッション写真の巨匠、ヘルムート・ニュートン(1920〜2004)。その世界に、12人の女性の視点から迫るドキュメンタリー映画『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』が12月11日よりBunkamuraル・シネマ、新宿ピカデリーほかにて全国順次公開される。
ヘルムート・ニュートンは、1920年にベルリン生まれ。 映画やラジオなどの大衆文化が広まったワイマール文化のなかで育ち、50代半ばから各国の『VOGUE』をはじめとするファッション誌に作品を発表し始めた。その作品は高く評価されるいっぽうで、「ポルノまがい」「女性嫌悪主義」という批判も浴び、常に議論を巻き起こしてきた。
本作は、このニュートンの人となりや作品を、12人の女性の視点から紐解くというもの。編集者としてはUS版『VOGUE』編集長であるアナ・ウィンターが、実際にニュートンのモデルを務めた人物としては、ランプリングやグレイス・ジョーンズ、ナジャ・アウアマンなどが登場。また、スーザン・ソンタグに代表されるように、辛辣な批判の言葉が差し込まれるのも本作の特徴だ。
加えて、生涯をともにした妻、ジューン・ニュートンが登場することで、よりプライベートなヘルムート・ニュートンの姿も垣間見られる。
ジェンダー平等が重視される現代において、ヘルムート・ニュートンの作品はどのような意味を持ち、そこから我々は何を読み取るのか。監督のゲロ・フォン・ベームは、「彼は自分の作品について議論が起こるのを楽しんでいました。この映画をつくった目的のひとつは、彼の作品をもう一度見せることで、人々に考えてほしかったのです。なぜなら、彼が当時やったことをいまやろうとする人はいないでしょう? これは話し合う必要があることです」と語っている(2020年4月27日にマンハッタンで開催されたトライベッカ映画祭でのプレミア上映後のインタビューより一部抜粋)。