2021年4月30日(日本時間5月1日)、アカデミー賞を主催するアメリカの映画芸術科学アカデミーが、「アカデミー映画博物館」をアメリカ・ロサンゼルスにオープンさせる。
同館は、映画における芸術と科学の紹介とアーカイブを目的とする施設。映画作品の世界観を伝えるだけでなく、教育的な要素も加味され、博物館の域を超えて映画や映画制作の体験と見識を提供する予定だ。なお、建築はプリツカー賞を受賞した建築家、レンゾ・ピアノが設計した。
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このオープンを記念し、館内の「Marilyn and Jeffrey Katzenberg」ギャラリーでは「宮崎駿展」が開催される。「スタジオジブリ」が企画制作に協力し、北米で初めての宮崎駿に焦点を当てた回顧展となる。キュレーションを務めるのは、アカデミー映画博物館キュレーターのジェシカ・ニーベルとアシスタント・キュレーターのJ・ラウル・グズマン。
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「宮崎駿展」では、『となりのトトロ』(1988)から、アカデミー賞受賞作品『千と千尋の神隠し』(2001)、そして『風立ちぬ』(2013)に至るまでの作品を、オリジナルイメージボード、キャラクターデザイン、絵コンテ、レイアウト、背景画、ポスター、セルなど約300点以上の資料で展示。また、フィルムクリップの大型投影など臨場感ある環境を用意し、半世紀を超える宮崎駿のキャリアを振り返る。
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展示は、宮崎作品に描かれている様々なテーマに焦点を当てて構成される。作中に登場する、美しい自然や環境と、労働や技術が支配する産業とのコントラストを総合的にとらえた「クリエイティングワールド」や、登場人物やストーリーが目覚ましい変容を遂げていく様子を描く「トランスフォーメーション」といった章により、宮崎が作品に込めた思想に迫る。
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また、宮崎がアニメーターとして参加した高畑勲監督のTVアニメシリーズ『アルプスの少女ハイジ』、宮崎の初監督作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)などの資料も紹介され、そのキャリアの全体像を俯瞰することができる。
いまなお新作に挑み続ける宮崎の半世紀を超えるキャリアを、北米の映画産業の視点から振り返る、意欲的な展覧会となる予定だ。
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