7月5日発売の『美術手帖』8月号は、森美術館で個展「魂がふるえる」を開催中の塩田千春を特集する。
塩田千春は、記憶、存在、生と死、沈黙といった、人間の根源的な問いをテーマにした大型インスタレーションなどで知られる。「作品の変遷史」では、2019年から1994年までのキャリアのなかでの代表作を、そのスペクタクルな作品のビジュアルとともに解説付きで紹介。25年間の塩田作品の移り変わりを見ることができる。
ベルリンのアトリエで取材した最新インタビューでは、塩田とは旧知の仲であるベルリン在住のアートジャーナリストの河合純枝が聞き手となり、塩田作品の普遍性と特異性を、ドイツ哲学やその歴史との関連性から紐解く。
森美術館での個展の最新レポートでは、大型インスタレーションの展示設営のインストールの様子から、最新作を含む展覧会の全容を現場の臨場感そのままに伝える。
塩田の作品制作は、自身の私的な出来事と密接に結びついている。その半生と作品制作年代記では、300を超える展覧会歴と極私的エピソード、そしてベルリンでのアトリエの変遷とともに、塩田の作品制作を振り返る。塩田の壮絶な人生と作品制作の関係、そしてその展覧会の圧倒的な量に圧倒される内容になっている。
また塩田は他の作家に自ら言及することは少ないが、25年以上にわたる国際的なアーティスト活動のなかで知り合った作家は数多くいる。その交友関係を、師弟関係、影響を受けた作家、ベルリンやグループ展での交流、共作したクリエイターにわけて紹介する。塩田作品の系譜やアート界での交流をうかがい知ることができる。
そのほか、特別企画としてベネッセホールディングス名誉顧問である福武總一郎との「アートと豊かさ」をめぐる対談、塩田が協働した国際的なキュレーターやコレクターのインタビューやコラム、そして、国際的なキュレーターであるデヴィッド・エリオットと美術史・記憶文化研究者である石谷治寛による、塩田作品の深層に迫る2つの論考を掲載。
塩田千春の人生と作品制作、これまでのキャリアとその広がりを振り返ることで、ジェンダーやナショナリティを越えて世界で受け入れられる塩田作品の現在的な意味を考える内容になっている。