「海の復権」をテーマに、2010年より3年に1度開催されてきた「瀬戸内国際芸術祭」。前回の2016年には、年間を通して約104万人が訪れるなど、日本最大規模となるこの芸術祭の2019年の一部内容が発表された。
まず注目したいのは、アーティスト・塩田千春と建築家・田根剛のコラボレーションだ。塩田が2010年より展示する《遠い記憶》がこのたび撤去。その場所で、2 人のコラボレーション作品が新たに生み出される。
そして香川県・女木島では、島の人たちにとって便利で、島外から来る人にとっては特色あるスポットとなるような、個性ある「小さなお店」を展開。このプロジェクトには、レアンドロ・エルリッヒをはじめ、宮永愛子、KOURYOUらが参加。香川県ゆかりの作家として、同県にホテルを制作中の宇川直宏のほか、アーティストの南条嘉毅、香川大学×小豆島夢プロジェクトチームが作品やプロジェクトを展開する。
また、今回の芸術祭での重点プロジェクトとなるのは、うちわ×西堀隆史、盆栽×平尾成志×瀬ト内工芸ズといった、瀬戸内の資源とアーティストのコラボレーション。アジアの国々のアーティストと瀬戸内の島々が連携する。また、総合キュレーターの北川フラムが「前回にも増して力を入れる」と話す、島の「食」とアーティストのコラボレーションや、芝居・舞踏の多様な展開にも注目したい。
芝居・舞踏での見どころのひとつは、アーティストのクリスティアン・バスティアンスによるハンセン病をテーマとしたインスタレーション作品。本作では、伝説的女優と謳われるリヴ・ウルマンや笈田ヨシ、大野慶人、石橋静河が出演する公演も行われる。
このほかSETOUCHI ART BOOK FAIRも初開催されるなど、これまで以上に多様な展開を見せる2019年の芸術祭のコンセプトは6つ。「アート・建築-地域の特徴の発見」「民俗-地域と時間」「生活-住民(島のお年寄りたち)の元気」「交流-日本全国・世界各国の人々が関わる」「世界の叡智-この地を掘り下げ、世界とつながる場所に」「未来-次代を担う若者や子どもたちへ」「縁を作る-通年活動」と多角的なものだ。
総合ディレクターの北川フラムが「大切なのは、3年間のうち、芸術祭の100日を除いた残りの1000日だと思います。島間交流事業なども含めて力をいれていきたい」と話すこの芸術祭。年間を通して注目したいイベントだ。