浜田知明 100年のまなざし

　2017年12月に100歳を迎えた版画家、彫刻家・浜田知明（はまだ・ちめい）。過酷な戦争経験を原点に、社会や人間、自身をも鋭くユーモラスに表現し続ける作品は国内のみならず世界的に高く評価されている。

　「戦争の残酷さや悲惨さ、軍隊の野蛮さや愚劣さを描きたい」という強い意志を抱いた浜田は、通算5年におよぶ過酷な従軍生活を経て終戦後27歳で復員。中断を余儀なくされた画家の活動を再開していく。1950年、32歳で駒井哲郎や関野凖一郎らと交流しながら本格的に銅版画制作を開始し、戦争経験を糧に「初年兵哀歌」シリーズを生み出した。

　初年兵として抱えた心の痛みに留まらず、侵略者としての自己にも目を向けたこのシリーズは、銅版画ならではの冷たいマチエールが印象的で、否応なく戦争に巻き込まれる人間の哀しみを、敵味方を超えて描き、戦後日本の版画に新たな地平を開いた。

　本展では、浜田の初期から近年までの銅版画約90点と彫刻作品4点の展示にあわせて、銅版画による新たな領域を追い求めた駒井哲郎、瑛九、浜口陽三、池田満寿夫らの作品も紹介。深い眼差しで時代を見つめ続けてきた浜田の軌跡をたどる。