Instagramのアカウント「@monkpictures」をご存知だろうか。このアカウントには、プロフィールもリンクも何も記載されていない。連日レシートの写真が投稿され続け、いまやその蓄積は膨大だ。
気になるレシートの内容は「SUSHI」「NOODLE」「NY CHEESE CAKE」「PAD THAI」など。おそらくアカウントを動かしている人物のランチやディナーだと思われる。
注目すべきは、すべてのレシートの上にドローイングがされているということ。そして描かれているのは、河原温やアンディ・ウォーホル、ソル・ルウィット、ドナルド・ジャッドなど、どれも現代美術を牽引してきた巨匠たちのアイコン的作品ばかりということだ。
たとえば、アーティスト自身の死によって終息を迎えた河原温の代表作「Date Painting」。@monkpicturesは、定期的にこの作品を模写のようにドローイングしており、河原温への並々ならぬリスペクトが伝わってくる。
この巧みな「引用」はイギリス人アーティスト、ジョナサン・モンクにも通じる。同作家を取り扱うTARO NASUに確認をとったところ、@monkppicturesはモンク本人のアカウントだと判明。そしてこれらの投稿はすべて「レシート・ドローイング」というシリーズ作品だとわかった。TARO NASUのスタッフはこう語る。
「『レシート・ドローイング』は、実際にモンクが飲食店で食事をした際のレシートにドローイングを施したシリーズです。描かれているのは、モンク自身のヒーローともいえるアーティストたちのアイコン的作品です。購入者はレシートに表示された金額を作品の対価として作家に支払います。つまり、購入者は作品を買うことによって、モンクのその日の飲食代を肩代わりすることになるわけですが、それはピカソなど美術の巨星たちとパトロンとの輝かしい関係性を現代におきかえるパフォーマンスでもあります」。
アートを素材にしてアートを生み出すモンクらしい作品。「レシート・ドローイング」シリーズは、Instagram自体がが展覧会会場のようになっているため、ギャラリーでの展示の予定は現段階ではないという。
なお本シリーズには、写真が投稿されてから最初にコメントをした者が購入できるというルールがある。フォロワー数も伸び始めており、現段階で4000人近く。購入希望者は、是非チャレンジし、このユニークなパフォーマンスに参加してほしい。
また、現在日本での取り扱いはないが、「レシート・ドローイング」のみをまとめたアーティストブック『One Hundred Meals Between Rome and Berlin』も出版されている。この本がInstagram以外で「レシート・ドローイング」を通覧できる唯一のメディアなので、こちらもあわせてチェックしてみてはいかがだろうか。