2018.1.23

「脚本賞」を受賞した異色のドキュメンタリー。ワン・ビン監督の最新作『苦い銭』が2月に公開

『鉄西区』『収容病棟』などのドキュメンタリー映画で注目され、近年美術のフィールドでも活躍するワン・ビン。中国・浙江省湖州で働く出稼ぎ労働者の姿をとらえた新作『苦い銭』が2月3日より公開される。

映画『苦い銭』より © 2016 Gladys Glover-House on Fire-Chinese Shadows-WIL Productions
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 1967年中国陝西省西安に生まれたワン・ビン。2003年に発表した9時間を超える画期的なドキュメンタリー『鉄西区』で高い評価を得た後、初の長編劇映画『無言歌』(2010)や、幼い姉妹の生活に密着した『三姉妹~雲南の子』(2012)、中国・雲南省の精神病院を撮影した『収容病棟』(2013)などを発表し、世界各国で多数の賞を受賞した。

 美術のフィールドでも注目され、2014年にはポンピドゥー・センター(パリ)にて1ヶ月以上にわたる回顧展が開催。17年には「ドクメンタ14」(カッセル)に招聘され、美術作品《15Hours》を発表したほか、回顧上映も行われた。

映画『苦い銭』より © 2016 Gladys Glover-House on Fire-Chinese Shadows-WIL Productions

 最新作『苦い銭』は、出稼ぎ労働者が住民の80パーセントを占める浙江省湖州で働く人々の姿をとらえたドキュメンタリー。田舎から初めて街に出て働きはじめる少女たちの瑞々しさ、金が稼げず酒に逃げる男、仕事がうまくできずになかばヤケになって別の工場へ移る青年など、いくつもの人生の一瞬を密接な距離感で描き出す。

映画『苦い銭』より © 2016 Gladys Glover-House on Fire-Chinese Shadows-WIL Productions

 被写体となる人物が次々に入れ替わりながら、人間関係をつなげる糸を巧妙にたぐっていくかのような精緻な編集により組み立てられた本作は、ドキュメンタリーにもかかわらず、2016年のヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で「脚本賞」を受賞。カメラの存在を消し、被写体の自然な会話や表情を引き出すワン・ビンならではのマジックにも注目だ。

映画『苦い銭』より © 2016 Gladys Glover-House on Fire-Chinese Shadows-WIL Productions