「版画家レンブラント 挑戦、継承、インパクト」が来夏、国立西洋美術館で開催。レンブラントのエッチングの魅力とその影響に迫る【4/4ページ】

 第3章「レンブラント版画の影響:19-20世紀」は、前章に続くかたちで19〜20世紀のレンブラントのエッチングの影響をたどる。最初に注目するのはスペインの画家、フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤによるレンブラントのエッチング研究だ。その成果を積極的に取り入れた作品が展示される。

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 使徒たちに現れるキリスト 1656 エッチング レンブラント・ハウス美術館
フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス 「戦争の惨禍」79番 真理は死んだ 1810-20頃 ウォーヴ紙にエッチング、バーニッシャー 国立西洋美術館

 19世紀の半ばから後半にかけてのフランスでも「エッチング復興」の機運が高まった。芸術家のみならず文学者や批評家も参加したこのムーブメントにおいて、理想的とされたのがレンブラントだった。こうした動きについても本章では取り上げる。

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 書斎の学者(またはファウスト) 1652 エッチング、ドライポイント、ビュラン 国立西洋美術館
フレデリック・レガメー 『エッチングのパリ』誌ポスター 1876 青色紙にリトグラフ レンブラント・ハウス美術館

 そして章の後半では、レンブラントの影響のもとで制作された作品群を紹介。レンブラントがその可能性を試みた手法を取り入れたフェリックス・ビュオやメアリー・カサットの作品を紹介。さらにレンブラントを直接的に引用したアンリ・マティスの自画像などを通じて、現在に至るまでのレンブラントへの敬意の系譜を照らし出す。

フェリックス・ビュオ ウェストミンスター・ブリッジ 1884頃 エッチング、ドライポイント、ルーレット 国立西洋美術館
アンリ・マティス 版画を彫るアンリ・マティス 1900/03 ドライポイント 国立西洋美術館

 レンブラントがエッチングにおいて何を試み、何を目指したのか。そして、なぜレンブラントのエッチングが今日まで高い評価を得てきたのか。西洋版画の歴史をひも解きつつ、その問いに迫る展覧会となりそうだ。