1990年代以降の現代美術を象徴するインスタレーションも、本展の大きな柱となる。松井智恵による「LABOUR」シリーズ(1993)は、辞書や衣装、鏡などを組み合わせた空間作品で、アーティストの身体的経験を可視化する先駆的な試みだ。現存する部材をもとに、稀少な作例が再展示される。

石原友明《世界。》(1996)は、床に敷き詰められた真鍮板の点字と、天井から吊るされたシャンデリアが呼応する大規模インスタレーション。鑑賞者が床に立つことで自らが作品に映り込み、「見る/見られる」という関係を逆転させる。本作は2004年以来、21年ぶりの展示となる。

毛利悠子《Parade》(2011–17)は、壁紙の模様を譜面に変換し、電流によってアコーディオンやドラム、風船などを動かすユーモラスなインスタレーションだ。光・重力・音といった不可視の現象を取り込みながら、場をブリコラージュ的に組み立てる新しい動向を示している。
さらに田中功起は、2015年の「PARASOPHIA」で発表した《一時的なスタディ:ワークショップ#1「1946年–52年占領期と1970年人間と物質」》を京都で再展示。当時ワークショップに参加した高校生を10年ぶりに再び集め、各自の立場からこの10年間を語る新作映像《10年間(仮)》も発表する。歴史を現在に重ね合わせ、日本社会の現状を問う意欲的な試みとなる。

Commissioned by "The Air We Share" at the Deutsches Hygiene-Museum Dresden (2024-2025) © Koki Tanaka
そのほか、コロナ禍を経て他者との距離感や呼吸、マスクといった日常的テーマを扱う西條茜、青山悟の作品や、関西出身の森村泰昌、やなぎみわによる身体・労働・パフォーマンスを題材とした写真作品も紹介される。藤本由紀夫や毛利悠子は、美術館の建築空間を活かした新作を準備しており、本展ならではの体験型展示となることが期待される。




















