また本展は、落合が提示する壮大な思想実験《ヌルのテトラレンマ》を、飛騨高山という歴史と民藝の文脈のなかで、実空間に実装する試みとなっており、日下部民藝館以外にも吉島家住宅と、古民家を改装したギャラリー&カフェ「おんど」の計3会場がその舞台となる。さらに大阪・関西万博の「null²」も加えた4つの空間で構成され、それぞれが「テトラレンマ(四つの命題)」に呼応する表現を担っている。
日下部民藝館では、新作彫刻《鵺 null-e(ヌエ)》が初披露となるが、本作は「テトラレンマ」の思想を具現化し、計算機自然と民藝、仏性とアルゴリズムの融合を象徴する一点となる。「異なる次元を貫通する変換装置」として会場の中心に据えられた本作から、人間性や信仰、物質とテクノロジーのあいだの境界がとけあう瞬間を垣間見ることになるだろう。
人間とデジタルが融合し、共生し、無へと還り、そして無限へと向かう未来像を標榜するための本展。万博の「null²」にいたる落合陽一の思考展開や表現の変遷を、飛騨高山という風土に接続・展開することで、落合が問いかける「人間とは何か」「生命とは何か」といった、人間がこれから向かうポストヒューマン時代の、存在のあり方を考えるための場を創出する。



















