「シアターコモンズ’25」がプログラム詳細を発表。演劇で開かれる社会的対話の場

演劇を通じて社会の様々な問題に新たな視点を提供する「シアターコモンズ’25」が、2月21日〜3月2日に都内各所で開催される。レバノンや中国からのアーティストによるパフォーマンスやレクチャー、参加型のプログラムなど、多彩なプログラムが展開される。

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 演劇の「共有知」を活用し、社会の「共有地」を生み出すプロジェクト「シアターコモンズ」。今年のプログラム詳細が発表された。

 異なる文化的・社会的背景を持つアーティストとともに、日常生活や都市空間を舞台に様々な表現を生み出しているシアターコモンズ。今年で第9回目を迎えるこのイベントは「ブレス・イン・ザ・ダーク/暗闇で呼吸する」をテーマに、都内各所で演劇やパフォーマンス、観客参加型のプログラムなどを展開する。会期は2月21日〜3月2日。

 レバノン出身の映画監督でアーティストのジョアナ・ハジトゥーマとカリル・ジョレイジュによるレクチャーパフォーマンス《オルトシアのめくるめく物語》は、同国のナハル・エル・バーリド難民キャンプで発見された古代ローマ都市オルトシアの物語を巡るもの。2007年のレバノン国内での武力衝突後、津波によって消失したオルトシアの遺跡が明らかになったが、その発掘作業は難民たちにとって再び強制移住を強いることとなり、このジレンマを同作に反映させている。ハジトゥーマとジョレイジュは、この歴史的な発見とその影響を舞台上で再構築し、未来に向けたタイムカプセルとしての意味を込めている。

ジョアナ・ハジトゥーマ&カリル・ジョレイジュ

 同時に、ふたりによる映画『スミルナ』(2016)などの映像作品を日本初公開する上映会も行われる。スミルナは、トルコのイズミルの古い呼び名であり、作家はこの地を舞台に、過去と現在が交錯する複雑な歴史のなかでの継承の意味を探る。また、閉館中のベイルート国立博物館で撮影された『酔った愛たちの石棺』や、『蛮族を待ちながら』も併映され、レバノンを生き抜いた作家たちの視点を通じて、観客に中東の現在についての深い考察を促す。

ジョアナ・ハジトゥーマ&カリル・ジョレイジュの映像作品

 さらに、芸術を「新しい祈りの形」としてとらえ、詩的でユーモアあふれる作品を制作するキュンチョメによる参加型パフォーマンス《ブレス・イン・ザ・ダーク ー平和のための呼吸ー》も注目されている。この作品では、暗闇のなかで観客が自分の呼吸に意識を向ける体験を通じて、身体と心、内外とのつながりを感じとることができる。呼吸法やヨガの伝統的な技法を取り入れながら、新たな幸せのかたちを模索する。

キュンチョメ  Photo: Ryohei Yanagihara

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