また、レクチャーパフォーマンス《Homesick for Another World》を披露するメイ・リウは、中国出身でオランダを拠点に活動しているアーティストで、強制ロックダウン下での体験をもとにした物語を展開する。上海での厳しい隔離体験を通じて、抹消された歴史や現在の大衆操作を示唆し、未来に向けた「もうひとつの世界」の可能性を提示する。
演劇界に革新をもたらしたルネ・ポレシュの戯曲『あなたの瞳の奥を見抜きたい、人間社会にありがちな目くらましの関係』は、急逝したポレシュの思索を受け継ぐかたちで、日本の小野彩加と中澤陽がリーディングパフォーマンスを行う。ポレシュが書き下ろしたこのモノローグは、社会の複雑さを鋭く照らし出し、2025年の混迷する世界で私たちにどのような意味を持つのかを問いかける。
市原佐都子の《キティ》では、家父長制や資本主義、大量生産と消費のひずみを痛烈に問い直し、現代社会が抱える矛盾を批評的ユーモアとともに表現する。欲望の均一化、畜産における生殖管理、劣悪な労働環境など、現代社会における不条理を鋭く突きつける本作は、観客に強烈なインパクトを与える。
最後に、佐藤朋子が手がける《オバケ東京のためのインデックス 東アジア編》では、東京に残る東アジアの植民地時代の痕跡を探るためのレクチャーパフォーマンスとウォークが行われる。ゴジラやカラスなどの「非人間」の視点を通じて、都市の「オバケ」的な記憶を浮かび上がらせ、鑑賞者は東京の知られざる歴史に触れることができる。
ほかにも、「演劇とケア」「演劇と社会」「演劇と東アジア」をテーマにしたフォーラムや、会期前半・後半それぞれの週末2日間で行われる集中ツアーも予定されている。これら多様なプログラムを通じて、日常生活や都市空間に潜む様々な問題について考えてみてはいかがだろうか。
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