ついに開幕、シアターコモンズ ’20の注目プログラムをチェック。小泉明郎のVR演劇や「芸術と社会」をめぐる連続フォーラムも

演劇の「共有知」を活用し、社会の「共有地」を生み出すことを目指し、2017年から開催されているプロジェクト「シアターコモンズ」。その4回目が、ついに開幕した。今回、注目すべき作品とは?

 

小泉明郎『縛られたプロメテウス』 (C) Aichi Triennale 2019 Photo:Shun Sato

 2017年にスタートした「シアターコモンズ」が、4回目の開催を迎えた。シアターコモンズは、演劇の「共有知」を活用し、社会の「共有地」を生み出すことを目指すプロジェクト。芸術公社の相馬千秋がディレクターを務め、「演劇をつかう。劇場をつくる。」をテーマに、「来たるべき劇場/演劇」のかたちを提示してきた。

 今年は、テクノロジーと人間の緊張関係や共犯関係を考察する最先端の演劇作品が、集中的に紹介される。

 なかでも注目すべきなのは、「あいちトリエンナーレ2019」で初演され、「VR演劇史の始まりを告げる傑作」と評された小泉明郎の『縛られたプロメテウス』だ。ギリシャ悲劇のアイスキュロス『縛られたプロメテウス』を出発点に、自分とは異なる「他者」の感覚や感情をVRという新たな技術によって追体験するこの演目。待望の東京公演に期待が高まる。

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 また、メキシコ出身で現在はベルリンを拠点に活動するアーティスト・ナフームは、シアターコモンズの委嘱を受けて、二部構成の「Another Life」/「軌道のポエティクス」を上演。催眠術を用いて、人間の想像力を拡張するレクチャーパフォーマンスとなる。

Photo by SpaceX

 また、ドキュメンタリー演劇の旗手として注目を集める若手アーティストユニット、ジルケ・ユイスマンスとハネス・デレーレは、スマートフォン操作だけで上演されるドキュメンタリー演劇『快適な島』を上演する。

 こうした、世界の最先端のパフォーマンスのほか、観客が参加・体験する、ユニークなリーディングやワークショップも開発。 

 今回は、あいちトリエンナーレ2019を発端にした4回にわたるコモンズ・フォーラムを連続開催。「芸術と社会」「芸術と公共」「芸術と仮想性」「芸術と政治」という4つのテーマのもと、国内外から総勢20名を超える論客を招き、観客同士の対話も含め、合計10時間を超える議論を行う。

 加えて、一連の騒動の教訓を未来の文化事業運営の共有知として活用するための「芸術祭の時代における危機管理ワークショップ」を企画。Jアート・コールセンターや芸術祭関係者を講師に迎え、実効性あるプログラムとして開発・提供する。

あいちトリエンナーレ2019の展示風景より、藤井光《無情》(2019) 撮影=怡土鉄夫

編集部

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