「シアターコモンズ ’24」の注目プログラムをチェック

今年で第8回となるプロジェクト「シアターコモンズ'24」が、2月29日〜3月12日の会期で開催される。タイの映画作家アピチャッポン・ウィーラセタクンによるVRパフォーマンスや、劇作家・演出家の市原佐都子が手がけた演劇公演などが予定されている。

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 演劇の「共有知」を活用し、社会の「共有地」を生み出すプロジェクト「シアターコモンズ」。第8回となる今回は、2月29日〜3月12日の会期で東京都内複数会場にて開催される。

 今年は、タイを代表する映像作家アピチャッポン・ウィーラセタクンによるVRパフォーマンス《太陽との対話(VR)》、劇作家・演出家の市原佐都子が手がけた演劇公演《弱法師》、ウズベキスタン出身の映像作家・アーティストのサオダット・イズマイロボによる近年の代表作5作品の上映などが予定されている。

 タイの東北地方を舞台に、伝説や民話、個人的な森の記憶や前世のエピソード、時事問題などを題材とした、静謐かつ叙情的な映像作品で知られる映画監督、ウィーラセタクン。今回の作品は、国際芸術祭「あいち2022」からの委嘱を受けて、日本のクリエイターたちとの協働のもと、自身初となるVR技術を使った制作された体験型パフォーマンス作品。言語を超えた映像詩、坂本龍一の音楽がつくり出す波動、空間に浮遊する光の粒子たちを体感することができる。

アピチャッポン・ウィーラセタクン 太陽との対話(VR) © Jörg Baumann

 市原は、日本に古くから伝わる説話『俊徳丸伝説』がもつ構造や悲劇性を現代に読み替え、日本の伝統的な文楽の形式を取り入れた、新しい人形劇を創作。人間たちの業や欲望、暴力性を引き受けながら、ラブドール、マネキンといった人形たちは人形遣いによって生命を与えられ、人間の代理として悲劇を演じる。

市原佐都子 弱法師 © Jörg Baumann

 2022年のヴェネチア・ビエンナーレおよびドクメンタ15に出展したイズマイロボは、カメラを通じてウズベキスタンの砂漠や古代遺跡、過去と現在のイスラーム世界の都市と人々、動物たち、旧ソ連時代に建設された建物群など、ウズベキスタンの風景そのものをとらえている。今回は、1930年代のウズベキスタンの無声映画やソ連時代のプロパガンダ映画をコラージュした『彼女の権利』、イスラーム神秘主義の宇宙観から着想を得た2023年の最新作『18,000の世界』、ドクメンタで話題を集めた中央アジアのシンデレラ物語『ビビ・セシャンべ』など、その代表作の日本初上映が日本語字幕付きで実現する。

サオダット・イズマイロボの作品 © Saodat Ismailova

 そのほか、幼少期に難民としてイランからオランダに移住し、ロッテルダムを拠点に活動するアーティスト、ナスタラン・ラザヴィ・ホラーサーニが祖国イランに暮らす子供たちとの通話から生み出した初来日公演となるパフォーマンス《Songs for No One – 誰のためでもない歌》、韓国を代表するアーティスト、イム・ミヌクが公益財団法人大林財団の「都市のヴィジョン」制作助成を受け、2年間におよぶ日本でのリサーチとクリエーションの成果として、隅田川と東京湾周辺を屋形船で周遊する水上パフォーマンスツアーと駒込倉庫での展覧会も開催される。

 また、上記の複数のプログラムをナビゲーターや参加者同士とともに楽しむ2日間の集中ツアーや、参加アーティストを迎えたコモンズ・フォーラムなども実施される。刺激的かつ複層的なプログラムをぜひ体験してほしい。

ナスタラン・ラザヴィ・ホラーサーニ Songs for No One – 誰のためでもない歌 © Julian Maiwald
イム・ミヌクの作品 © Minouk Lim

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