広島市現代美術館が、国際的に活躍するインドネシア出身のアーティスト、ティンティン・ウリアの日本初となる個展「ティンティン・ウリア:共通するものごと」を開催する。会期は9月21日〜2025年1月5日。
ティンティン・ウリアは1972年インドネシア・デンパサール生まれ。現在はオーストラリア、イギリス、スウェーデンを拠点に国際的に活躍する学際的なアーティストで、HDK ヴァランド芸術デザインアカデミー(イェーテボリ大学、スウェーデン)の上級研究員でもある。地政学的、社会的な境界をインターフェイス(接点)ととらえ、市民権、戦争、国家機密など、国境に関連するテーマを扱う。
民族的なマイノリティである中国系バリ人として育った自身の生い立ちや、移住の経験と、グローバリゼーションやグローバルな政治を織り交ぜながら、多領域にわたるインスタレーション作品を発表。研究者としては近年、1965-66年のインドネシア大虐殺に関連する機密解除された米国文書のほか、社会政治的変革における美的オブジェクトの役割に関する研究を進めている。近年の個展は「ティンティン・ウリア:秘密」RMIT ギャラリー(メルボルン、2023)、「ティンティン・ウリア:開示」Baik Art(ジャカルタ、2023)など。
幼少期から差別を受けてきた経験をもつウリアは、人々がつくり出した境界と、その境界を維持するために人々が繰り広げる戦争に関心を抱き、多領域にわたるインスタレーションや映像作品を通して、こうした問題を伝えてきた。個人的な体験に立脚した芸術的実践を通して、私たちの身の回りにあるものごとが、美的要素を獲得することで、人々をつなぐ「共通するものごと」になり得ることに次第に気づくようになったという。現在、こうした美的オブジェクトがいかに社会的・政治的変革に結びつくかを調査するプロジェクトを進めている。
日本での初個展となる本展では、比較的初期から現在に至る作品を紹介。個々の記憶を含む個人的背景が、いかに集団的な行動や、他者との社会的つながりへと変容し得るのか、という点に着目するウリアの芸術的試みの変遷を、作品を通して体験する機会となる。
なお展覧会に関連したオープン・プログラムとして「ミーティングポイント」も開設され、インドネシアの歴史や文化に関連する書籍や映像を自由に閲覧可能。また、ウリア個人のアーティスト活動だけでなく協働して行うリサーチやワークショップ、研究プロジェクトなどの活動の一部も展示を通して紹介される。