今週末に行きたい展覧会ベスト9。アイザック・ジュリアン、ブランクーシから私たちのエコロジー、オラファー・エリアソンまで

今週末までに開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

ISAAC JULIEN - TEN THOUSAND WAVESエスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2024)Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

気候変動や環境問題などを現代アートで問いかける。「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」(森美術館)

展示風景より、ニナ・カネル《マッスル・メモリー(5トン)》(2023)

 気候変動や環境問題など、すべての人類の家である地球が今日抱えている様々な課題を現代アートで問いかける展覧会「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」が、3月31日まで東京・六本木の森美術館で行われている。レポート記事はこちら

 本展では、国内外のアーティスト34名による歴史的な作品から新作まで多様な表現約100点を4つの章で紹介。環境問題をはじめとする様々な課題について多様な視点で考えることを提案するとともに、輸送を最小限にし、可能な限り資源を再生利用するなどサステナブルな展覧会制作を実施。現代アートやアーティストたちがどのように環境危機に関わり、また関わり得るのかについて思考を促し、美術館を対話が生まれる場とすることを目指す。

会期:2023年10月18日~2024年3月31日
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~22:00(火~17:00、ただし1月2日、3月19日は〜22:00、10月26日は〜16:00)
料金:[平日]一般 2000円 / 高校・大学生 1400円 / 4歳~中学生 800円 / 65歳以上 1700円
[土・日・休日]一般 2200円 / 高校・大学生 1500円 / 4歳~中学生 900円 / 65歳以上 1900円

新作インスタレーションや水彩絵画などを堪能。「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」(麻布台ヒルズギャラリー)

展示風景より、オラファー・エリアソン《蛍の生物圏(マグマの流星)》(2023)

 昨年開業した麻布台ヒルズのガーデンプラザAにある麻布台ヒルズギャラリー。その開館記念展として、「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」が3月31日まで開催されている。レポート記事はこちら

 麻布台ヒルズの開業にあわせて、エリアソンは新作のパブリック・アート《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》(2023)を制作し、森JPタワーのオフィスロビーで公開。今回の展覧会は、このパブリック・アートで取り組んだ主題を軸に、新作インスタレーションや水彩絵画、ドローイング、立体作品などを見ることができる。

会期:2023年11月24日〜2024年3月31日
会場:麻布台ヒルズギャラリー
住所:東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階
開館時間:10:00〜19:00(火〜17:00、金土祝前日〜20:00) ※入館は閉館時間の30分前まで
料金:一般 1800円 / 学生 1200円 / 4歳〜中学生 900円

誤解や複製を通じて、その「個性」に着目する。「荒木悠 LONELY PLANETS」(十和田市現代美術館)

展示風景より、《ALMOST DOWN》(2012 / 2023)

 言語・文化間で起こる齟齬や、オリジナルと複製の関係性、そこから生まれる権力構造をユーモラスを交えて表現してきた映像作家・荒木悠。その美術館での初個展「荒木悠 LONELY PLANETS」が十和田市現代美術館で3月31日に閉幕する。レポート記事はこちら

 荒木が関心を寄せ、映像作品として表現してきたのは、各国の様々な言語・文化間で起こる齟齬や、オリジナルと複製の関係性、そしてそこから生まれる権力構造だ。会場では、青森を旅をするかのように巡り、リサーチを経て制作された新作の映像作品4点と過去作品4点が展示されている。

会期:2023年12月9日〜2024年3月31日
会場:十和田市現代美術館
住所:青森県十和田市西二番町10-9
電話番号:0176-20-1127
開館時間:9:00〜17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌火)、メンテナンス休館(1月22日〜29日)
料金:一般 1800円(常設展込み)/ 高校生以下 無料

吉原遊廓の発展から衰退までの流れを知る。「大吉原展」(東京藝術大学大学美術館)

展示風景より、辻村寿三郎・三浦宏・服部一郎《江戸風俗人形》(1981)

 江戸幕府公認の遊廓であった吉原や、そこで育まれてきた文化にフォーカスする「大吉原展」が東京・上野の東京藝術大学大学美術館で開催されている。レポート記事はこちら

 吉原とは、江戸時代につくられた遊廓街。そこでは、絵画や浮世絵、文学、工芸、年中行事など様々な文化が生まれ育まれてきたいっぽうで、その経済基盤は、家族の借金のためにやむなく働いていた女性たちの売買春で支えられていたという両側面をあわせ持っている。

 本展では、吉原で育まれてきた文化を取り上げつつ、出展作品を通じて、遊女たちがどのように生き、周囲からどのような目線を向けられてきたか。吉原遊廓の発展から衰退までの流れとともにうかがい知ることができる内容となっている。

会期:2024年3月26日~5月19日(前期:3月26日~4月21日、後期:4月23日~5月19日)※会期中展示替えあり
会場:東京藝術大学大学美術館
住所:東京都台東区上野公園12-8
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル) 
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月(ただし4月29日、5月6日は開館)、5月7日 
料金:一般 2000円 / 高大生 1200円

事故の犠牲者に敬意を捧げた作品。アイザック・ジュリアン「Ten Thousand Waves」(エスパス ルイ・ヴィトン大阪)

ISAAC JULIEN - TEN THOUSAND WAVES
エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2024)
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris
Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

 エスパス ルイ・ヴィトン大阪で、英国を代表するアーティストのひとりであるアイザック・ジュリアンの個展「Ten Thousand Waves」が始まっている。レポート記事はこちら

 本展は、パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンのコレクションを紹介する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として開催されるもので、ジュリアンの大規模ヴィデオ・インスタレーション《Ten Thousand Waves》(2010)を日本で初めて公開。役者、場所、時代が混ざりあうポリフォニーの中心に、強制的な移動と移民の問題が据えられている作品だ。

 制作のきっかけは、2004年に英国北部で違法就労の中国人労働者23人が潮流に巻き込まれ命を落とした、モーカム湾の遭難事故。ジュリアンはこの事故のリサーチを行い、4年という長い歳月をかけて作品を編み上げた。事故の犠牲者に敬意を捧げた本作品では、ジュリアンが遭難事故への応答として詩人ワン・ピンに委託して制作された詩がこだまする。 

会期:2024年3月27日〜9月22日
会場:エスパス ルイ・ヴィトン大阪
住所:大阪府大阪市中央区心斎橋筋2-8-16 ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5F
開館時間:12:00〜20:00 
休館日:ルイ・ヴィトン メゾン大阪御堂筋に準ずる
料金:無料

約700点の膨大な資料が紹介。「日本の仮面――芸能と祭りの世界」(国立民族学博物館)

展示風景より、鹿児島・硫黄島の「八朔太鼓踊り」の「メンドン」

 国立民族学博物館で、みんぱく創設50周年記念特別展「日本の仮面――芸能と祭りの世界」が開幕した。レポート記事はこちら

 国内各地には、仮面が様々なかたちで用いられ、重要な役割を果たしている芸能や祭りが伝わっている。こうした各地の芸能や祭の仮面の多様性は、仮面が登場する芸能や祭りの歴史的な展開及び、それらの全国各地への伝播・定着と、その後の各地の地域社会における伝承を通じて形成されてきたとされる。本展はこのような多様性に富む仮面を、国立民族学博物館の所蔵品をはじめ、各地の社寺や博物館など約700点の資料を通して紹介するものだ。 

 おもな展示物は同館所蔵品のほか、島根県立古代出雲歴史博物館、矢田寺(奈良・大和郡山市)、鳥取東照宮(鳥取市)、御霊神社(神奈川・鎌倉市)、徳島県石井町教育委員会や須沢自治会(長野・飯田市)をはじめ、各地の芸能や祭りの保存会などが所蔵・保管する仮面及び、それらの仮面が登場する映像など。

会期:2024年3月28日~6月11日
会場:国立民族学博物館
住所:大阪府吹田市千里万博公園10-1
電話番号:06-6878-8560
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:水
料金:一般 880円 / 大学生 450円 / 高校生以下無料

デザインの新たな可能性を探る。「未来のかけら:科学とデザインの実験室」(21_21 DESIGN SIGHT)

展示風景より、稲見自在化身体プロジェクト+遠藤麻衣子によるプロジェクト

 東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」がスタートした。レポート記事はこちら

 本展は、展覧会ディレクター・山中俊治が大学の研究室で様々な人々と協働し生み出してきたプロトタイプやロボット、その原点である山中のスケッチを紹介するとともに、専門領域が異なる7組のデザイナーやクリエイター、科学者、技術者らのコラボレーションによる多彩な作品を展示するもの。最先端技術や研究における先駆的な眼差しとデザインが出会うことで芽生えた「未来のかけら」を通じて、不確かな未来に対する可能性やデザインの楽しさに向きあうきっかけを創出する。

 参加クリエイター・プロジェクトは、荒牧悠+舘知宏、稲見自在化身体プロジェクト+遠藤麻衣子、A-POC ABLE ISSEY MIYAKE + Nature Architects、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)+山中俊治、東京大学DLX Design Lab +東京大学 池内与志穂研究室、nomena+郡司芽久、村松充(Takram)+ Dr. Muramatsu、山中研究室+今仙技術研究所・稲見自在化身体プロジェクト・臼井二美男・宇宙航空研究開発機構(JAXA)・岡部徹・河島則天・斉藤一哉・SPLINE DESIGN HUB・鉄道弘済会義肢装具サポートセンター・新野俊樹・Manfred Hild・吉川雅博。

会期:2024年3月29日〜8月12日
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
電話番号:03-3475-2121 
開館時間:10:00〜19:00 ※入館は18:30まで
休館日:火
料金:一般 1400円 / 大学生 800円 / 高校生 500 円 / 中学生以下無料

日本の美術館では初めての本格的な展覧会。「ブランクーシ 本質を象(かたど)る」(アーティゾン美術館)

コンスタンティン・ブランクーシ 接吻 1907-10
石膏 高さ28.0cm 石橋財団アーティゾン美術館

 20世紀彫刻の先駆者と評され、ルーマニア出身の彫刻家コンスタンティン・ブランクーシ。その創作活動の全体を紹介する展覧会「ブランクーシ 本質を象る(かたどる)」が、3月30日にアーティゾン美術館で開幕する。

 ブランクーシはルーマニアのホビツァに生まれる。ブカレスト国立美術学校に学んだ後、1904年にパリに出て、ロダンのアトリエに助手として招き入れられるも、短期間で離れ、独自に創作に取り組み始める。同時期に発見されたアフリカ彫刻などの非西欧圏の芸術に通じる、野性的な造形を特徴とするとともに、素材への鋭い感性に裏打ちされた洗練されたフォルムを追求し、同時代および後続世代の芸術家に多大な影響を及ぼしたことで知られる。

 本展は、日本の美術館で初めて本格的に行われるブランクーシ展。初期から後半期まで約20点の彫刻作品を中核に、フレスコ、テンペラなどの絵画作品やドローイング、写真作品など約90点の作品が展示される。彫刻作品のなかでも、パリのブランクーシ・エステートおよび国内外の美術館から借用の作品も集まる。

会期:2024年3月30日〜7月7日
会場:アーティゾン美術館 6階展示室
住所:東京都中央区京橋1-7-2
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00、5月3日を除く) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日
料金:ウェブ予約 1800円 / 窓口販売 2000円 / 学生無料(要ウェブ予約)、中学生以下予約不要
※日時指定予約制(2024年1月30日よりウェブ予約開始)
※予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケットを購入可能。
※この料金で同時開催の展覧会をすべて鑑賞できる。 同時開催:石橋財団コレクション選 特集コーナー展示|清水多嘉示(5・4階 展示室)

国内初となる大規模個展。「Exploring Color and Space-色と空間を冒険する」(茅ヶ崎市美術館)

Bound for Eternity (red) 2008 Photo by Photo Studio Nishiyama

 ロサンゼルスと鎌倉を拠点に、世界的に活躍している現代アーティスト・フランシス真悟の国内初となる大規模個展「Exploring Color and Space-色と空間を冒険する」が、3月30日より神奈川の茅ヶ崎市美術館で開催される。

 アメリカ・サンタモニカ生まれのフランシス真悟は、日本とアメリカをルーツにもち、幼少期より色彩がもつ豊かさに触れ、色彩が人にもたらす知覚体験について探求し続けてきた。父はアメリカの抽象表現主義の巨匠サム・フランシス、母はメディア・アーティストの出光真子という環境のなかで育ち、そして、若い頃にライト&スペース・アートのジェームズ・タレルや抽象表現主義のジョアン・ミッチェルと出会い、大きな影響を受けた。

 本展では、代表作シリーズ「Interference」や「Blue’s Silence」、「Infinite Space」など、フランシスの1980年代の初期からの多様な絵画作品、約100点が一堂に会する。また、同館の自然光が差し込む展示空間を活かした本展のためにつくられた新作約10点も展示予定となっている。

会期:2024年3月30日〜6月9日
会場:茅ヶ崎市美術館
住所:神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-4-45
電話番号:0467-88-1177
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は16:30まで
休館日:月(ただし4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日
料金:一般 800円 / 大学生 600円 / 市内在住65歳以上 400円 / 高校生以下、障がい者およびその介護者は無料

編集部

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