第76回カンヌ国際映画祭に出品し、主演を務めた役所広司が最優秀男優賞を受賞した最新作『PERFECT DAYS』でも国内外から注目を集めるヴィム・ヴェンダース。その個展「ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし 」が、東京・目黒のN&A Art SITEで開催される。会期は2024年2月1日〜3月2日。
ヴェンダースは1945年ドイツ・デュッセルドルフ生まれ。ミュンヘン大学で映像制作を学び、67年から映画監督としての活動を開始。長編映画デビュー作『ゴールキーパーの不安』(1971)で第32回ヴェネチア国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞。その後も『ことの次第』(1982)、『パリ、テキサス』(1984)、『ベルリン・天使の詩』(1987)、『ミリオンダラー・ホテル』(2000)などで様々な賞を受賞している。
また写真家としても活動し、これまでポンピドゥー・センターやビルバオ・グッゲンハイム美術館、上海美術館など展覧会を開催。2022年には第33回高松宮殿下記念世界文化賞(演劇・映像部門)を受賞したことは記憶に新しい。
本展では、ヴェンダースが「究極のロードムービー」と称する『夢の涯てまでも』(1991)のクライマックスシーンから生み出された、鮮烈な色彩の電子絵画作品「Electronic Paintings」が展示される。
同作のクライマックスは東京のNHK編集室において、当時の最先端映像技術であったハイビジョン(Hi-Vision)で制作され、ヴェンダースによって「夢のシークエンス」と名付けられた。ヴェンダースは制作の過程で、8ミリフィルム、16ミリフィルム、ビデオ画像、写真、ドローイングなどのアナログデータをデジタルデータに変換したときに、見たこともない絵のような幻影を偶然発見したという。これらのイメージに主演俳優らの写真を撮影・合成し、新たな視覚表現をつくり上げた。「Electronic Paintings」は、その「動く絵画」の中からヴェンダース自身が静止画像を取り出し、画像・色彩を操作しながら、当時最先端の印刷技術で高精細に出力した作品シリーズだ。
また本展では、『パリ、テキサス』ロケ時にヴェンダースが撮影したアメリカ中西部の風景写真「Written in the west」シリーズも展示される。
なおこれらは、映画『夢の涯てまでも』のアソシエイト・プロデューサーを務めた御影雅良がコレクションし、30年以上保管していたヴェンダースの署名入り 「Electronic Paintings」(A/Pポートフォリオ)および、「Written in the west」シリーズからの出展となる。