千葉・佐倉のDIC川村記念美術館で、1960年代後半のアメリカを中心に興隆したミニマル・アートの代表的な彫刻家カール・アンドレの国内美術館初個展「カール・アンドレ 彫刻と詩、その間」が開催される。会期は2024年3月9日〜6月30日。本展は韓国・大邱美術館「2023 Umi Hall Project Carl Andre」(2023年9月26日~12月31日)の国際巡回展。
カール・アンドレは1935年アメリカ・マサチューセッツ州生まれ。詩を共通の趣味とする両親のもとに育ち、アンドーバーの名門フィリップス・アカデミーで学んだ後、ヨーロッパ滞在や兵役を経て1957年にニューヨークに居を移し、出版社で職を得た。翌年よりフランク・ステラとスタジオを共有してコンスタンティン・ブランクーシに影響を受けた、鑿で木に切れ込みを入れる彫刻を制作。1960年から約4年間ペンシルヴェニア鉄道で制動手として勤務する傍ら、詩作やユニット状の木を組み合わせる「エレメント」シリーズに取り組み、64年にグループ展で初めて発表。翌年にはティボール・ド・ナギ・ギャラリーで初個展を行った。
66年の「プライマリー・ストラクチャーズ」展に137個のレンガを直列に並べた《レヴァー》を出品すると、程なくして正方形の金属板を並べた床置き彫刻の制作を始め、アメリカ、ヨーロッパなど各地で空間に合わせて規模の異なる様々な作品を発表。70年には「第10回日本国際美術展(東京ビエンナーレ):人間と物質」の招聘作家として来日した経緯がある。
本展では、同一の形と大きさに加工した木、金属、石のユニットを床に直接置き、規則的に広がるアンドレの典型的な彫刻作品を大きな空間で展開。作品はその上を歩くことも可能で、能動的な鑑賞体験は「場としての彫刻」というアンドレの言葉の意味する、作品と空間、そしてそれを知覚する自分の存在を感じられるだろう。
また、本展では知る人ぞ知るアンドレの詩もまとまったかたちで紹介。単語を組み合わせて構成されるアンドレの詩は、読むことでも眺めることでも楽しめるもので、彫刻に通ずるアンドレの空間的、構造的な認識や、歴史、哲学への興味、原風景である地元クインシーへの愛着、身近な人々との関係などアンドレの思考が反映されているという。
彫刻と詩という離れた表現で展開されるカール・アンドレの作品群を俯瞰できる貴重な機会となる。