国内2つ目のエスパス ルイ・ヴィトン
世界各地に存在するルイ・ヴィトンのアートスペース「エスパス ルイ・ヴィトン」。その国内2つ目となる「エスパス ルイ・ヴィトン大阪」が2月10日、ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋内5階にオープンした。
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ルイ・ヴィトンはこれまで東京、ミュンヘン、ヴェネチア、北京、ソウルのエスパス ルイ・ヴィトンにおいて、フォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵作品に触れる機会をより多くの人々に提供することを目的とした「Hors-les-murs(壁を越えて)」を展開。国内では2011年に誕生した「エスパス ルイ・ヴィトン東京」で、ダン・フレイヴィンやクリスチャン・ボルタンスキー、ダグ・エイケンといった国際的に知られるアーティストたちの個展を中心に、様々な企画を行ってきたことで知られている。
エスパス ルイ・ヴィトンにとって西日本初のスペースとなるエスパス ルイ・ヴィトン大阪においても、この「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムを展開。20世紀のアートを中心に、展覧会などを行っていく。
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このオープニングを飾るのは、アメリカを代表するふたりのアーティスト、ジョアン・ミッチェルとカール・アンドレの2人展「Fragments of a landscape (ある風景の断片) 」展だ。ジョアン・ミッチェル(1925〜1992)は50年代に画家としての活動をスタートさせ、第二次大戦後に抽象表現主義の旗手となった。いっぽうのカール・アンドレ(1935〜)は、フランク・ステラの影響を色濃く受け、独自のスタイルを確立。70年代初めにミニマル・アート運動を牽引した彫刻家として知られる。
本展は、ジョアン・ミッチェルの巨大絵画2点と、31個ものパーツからなるカール・アンドレの彫刻作品1点によって展示が構成されている。ミッチェルの絵画は、全長4メートルの三連画《Untitled》(1979)と二連画の《Cypress》(1980)。ともに黄色を中心に色数を抑えながらも、力強い筆致がエネルギーを感じさせる作品だ。その作品からは、ミッチェルが尊敬していたというヴァン・ゴッホの影響も感じ取れるだろう。
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いっぽう、アンドレの《Draco》(1979-2008)は、ウェスタンレッドシダー(ベイスギ)の材木を組み立てた作品で、その全長は約19メートルにもおよぶ。素材に手を加えることを拒み、作品が置かれる環境との関係を重視しているアンドレ。本作は極めて単純な構造ながら、展示室中央に設置されることで作品が来場者の動きをコントロールしつつ、展示空間にほどよい緊張感を与えている。
これらの作品がつくられたのはほぼ同じ時代。ふたりの作品から、抽象表現主義からミニマル・アートへと移り変わっていく美術の潮流が読み取りたい。
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店内にもアートな見どころが満載
エスパス ルイ・ヴィトン大阪が入るルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋は、建物そのものにも注目したい。
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同店は、ルイ・ヴィトンの店舗デザインを数多く手がけてきた青木淳が外観の設計を担当。かつて海の街であった大阪の歴史を彷彿させる菱垣廻船から着想を得たというファサードは、帆を立てた船のようにも見える。湾曲したガラス面には特殊な技法が使用されているなど、技術面にも注目だ。
店内の1階から4階までの内装は、数々の高級メゾンの建築を手がけてきた建築家ピーター・マリノが担当。マリノもファサード同様、「船」や「旅」にインスパイアされ、内装をデザインしたという。ファサードの「帆」から入る自然光をうまく取り入れた開放感ある空間には、マリノ自身がセレクトした家具やアート作品が多数展示。その規模は数あるルイ・ヴィトン店舗でも随一だと言える。
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なお7階には、ルイ・ヴィトン初となるカフェ「LE CAFE V(ル・カフェ・ヴィー)」と、紹介制レストラン「SUGALABO V(スガラボ・ヴィー)」が併設。
「LE CAFE V」では松岡亮の絵画作品3点が展示されているほか、「SUGALABO V」には井田幸昌の絵画2点が展示。ともに食事をしながらアートを楽しむことができるのが嬉しい。また両スペースとも家具とオブジェのコレクションである「ルイ・ヴィトン オブジェ・ノマド コレクション」が使用されているほか、「SUGALABO V」では吉岡徳仁が同店のためにデザインしたチャージャープレートも見ることができる。
こうした店内の隅々にまでアートが散りばめられたルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋はまさにアートスポット。「エスパス ルイ・ヴィトン大阪」とともにその空間を堪能したい。
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