アンビエント・ミュージックの創始者、歴史的プロデューサー、アクティビスト、そしてヴィジュアル・アートに革命をもたらしたアーティスト──多彩な顔を持つブライアン・イーノが、コロナ禍において初となる大規模な展覧会「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」を、6月3日より京都で開催する。
ブライアン・イーノは70年代初頭にイギリスのバンド、ロキシー・ミュージックの創設メンバーのひとりとして世界的に注目を集め、その後、一連のソロ作品や様々なコラボレーション作品を発表。プロデューサーとしては、トーキング・ヘッズやU2、ローリー・アンダーソン、コールドプレイなど名だたるミュージシャンのアルバムを手がけ、デヴィッド・ボウイやジョン・ハッセル、ジェイムス・ブレイクなどともコラボレーションを行なってきた。
こうした音楽活動と並行し、光や映像を使ったヴィジュアル・アートの創作活動を展開。ヴェネチア・ビエンナーレやサンクトペテルブルクのマーブル・パレス、北京の日壇公園、リオデジャネイロのアルコス・ダ・ラパ、シドニー・オペラハウスなど、世界中で展覧会やインスタレーションを行なってきた。
築90年の歴史ある建物・京都中央信用金庫 旧厚生センターを会場とするこの展覧会では、ブライアン・イーノの代表作である《77 Million Paintings》《The Ship》《Light Boxes》の3作品すべてが一堂に会するのに加え、世界初公開となる作品《Face to Face》が展示される。
《77 Million Paintings》は途絶えることなく変化する音と光がシンクロして生み出されるインスタレーションで、「7700万」という数字はシステムが生み出すことのできるヴィジュアルの組み合わせを意味する。2006年のラフォーレミュージアム原宿で世界初公開され、その後アップデートを繰り返しながら世界各地で47回の展示を重ねてきた。
《The Ship》はブライアン・イーノの代表的なオーディオ・インスタレーションだ。多数の個性的なスピーカーから個別の音が鳴ることで、場所によって違う音が聴こえるこの作品。鑑賞者が部屋の中を移動することによって、個別のスピーカーから出る音を自発的にミックスすることもできる。またスピーカーが視覚的特徴となるよう、照明などで空間が演出されることも特徴的だ。
《Light Boxes》はその名の通り、光りながら常に新たな色彩の組み合わせへと変わってゆく、LED技術を駆使した光の作品。作品の表面下にあるボックスが照らされ、光の色の組み合わせがゆっくりと変化していく。光そのものの魅惑的な世界に引き込むものだ。
そして本展で世界初公開となる《Face to Face》は、ランダムなパターンとその組み合わせによって、予期せぬ作品を生み出す可能性を追求したものだという。実在する21人の人物の顔をそれぞれ1枚の静止画に収めた小さな写真群から始まったというこの作品。特殊なソフトウェアを使い、画像は1つの実在する顔から別の顔へと、ピクセル単位でゆっくりと変化していき、実在しない人々、中間的な人間など、「新しい人間」の長い連鎖を生み出す。毎秒30人ずつ、3万6000人以上の新しい顔を誕生させることができるという。
絶え間なく変化し続ける音と光がシンクロする「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」。この場所だけでしか味わえない鑑賞体験を与えてくれるものになるだろう。