大阪・河南町にある大阪芸術大学。その校舎内にある「実験ドーム」が、サウンドアーティスト・evalaの総合ディレクションにより、本格的な空間音響を学べる施設として大規模改修された。
evalaは、新たな聴覚体験を創出するプロジェクト「See by Your Ears」の主宰。これまでに立体音響システムを駆使し、空間的作曲によるな作品を国内外で発表してきた。完全な暗闇の中で体験する音だけの映画《Sea,See,She - まだ見ぬ君へ》で第24回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞、空間音響アルバム『聴象発景 in Rittor Base -HPL ver』でプリ・アルスエレクトロニカ2021のDigital Musics & Sound Art部門栄誉賞を受賞しており、視覚ではなく聴覚のみで鑑賞する作品を追求している。
今回、evalaが総合ディレクションを担い改修された「実験ドーム」は、1981年に同校の「芸術情報センター」の地階空間に設置された半球型のサラウンドシアターで、音楽や映像表現を追求する場として活用されてきた。
今回のリニューアルにより、実験ドームはこれまでの8chから17.4chのサラウンドシステムにアップデート。全球音響に近づけるために、床下を含めて17台のスピーカーを設置し、360度全球サラウンド空間を創設当初の機構を活かしながら実現した。なお、音響システム設計は株式会社アコースティックフィールド、音響施工は日本音響エンジニアリング株式会社が手がけた。
同校で客員教授も務めるevalaは、この実験ドームでの実習を含め、サウンドアートを総合的に学ぶ授業を今年度より実施するという。evalaはこの施設が教育に資する点を次のように語った。「半球型のドームはすべての音が中心部に集約されていくので、極めて特殊な環境。こうした環境で、音が空気を震わせて伝わることを実感してもらうとともに、音そのものにイマジネーションの多彩な源が存在することに気がついてもらえれば。音響を学ぶにはうってつけの環境になるはずだ」。
また、evalaは40年も前にこれほどの環境を用意した先進性に触れつつ、今後の展望を次のように述べた。「今回のリニューアルは、40年前にこのドームが設計されたときの思想を、現代の技術において反映させたともいえる。身の回りに多くの視覚情報が存在する現代だからこそ、改めて目に見えない音そのものが持つ可能性を多くの人に感じてほしい。願わくば、この環境で新たなアーティストが育ってくれれば」。
なお、本ドームは今後も映像投影機能などをアップデートする予定。また、この実験ドームの環境に合わせてevalaは新作を制作予定。今年度末の公開を目指す。