ドローイングを軸に活動。新たなスペース「ヒロシマ・ドローイング・ラボ」とは?

今年10月、ドローイングにフォーカスした新たなスペース「ヒロシマ・ドローイング・ラボ」が広島市中区鉄砲町にオープンする。

井原信次 Caro Ⅱ 2020 (C)Shinji Ihara

 様々な美術の表現方法のひとつである「ドローイング」。これを軸に、アーティストによる展覧会の企画と開催、ワークショップ、レクチャーなどの活動を行うスペース「ヒロシマ・ドローイング・ラボ」(HDL)が誕生する。

 HDLはギャラリーではなく、アーティストが自主運営するラボ。メンバーは、井原信次、江森郁美、手嶋勇気、七搦綾乃の4名で構成されており、この4名による展覧会開催を中心にしつつ、将来的には、広島をテーマにした企画展や、作家を招待し現地制作と発表を行うレジデンスなども企画するという。

江森郁美 Sketch for the work 2020 (C)Ikumi Emori

 このHDLの活動について、メンバーのひとりである井原はこう話す。「ドローイングは見ることから始まり、線、形、陰影、空間などを表現します。それらは社会を見ることにも通ずる部分があります。ドローイングを、鉛筆で描かれた作品としてだけではなく、物事を『見ること』から始まる何かとしてとらえ、それらを活動のコンセプトとしています」。

 オープニングを飾るのは、「SILVER LINING」展。英語の諺である「Every cloud has a silver lining.」(どんなに厚く暗い雲でも、その裏側は銀色に輝いている)からとられた本展の参加作家は、井原、江森、手嶋気、七搦の4名だ。この企画意図について、井原は「作家紹介の意味合いもありますが、分岐点となるコロナ渦にある現在をドローイングでいう『稜線』ととらえ、見えないもの(線)をどうとらえるか、グランド・ゼロがないパンデミックのなかでそれらを記録、共有することの重要性を感じ、企画しました」としている。

七搦綾乃 Sketch for the work 2020 (C)Ayano Nanakarage

 「ドローイング・ラボ」という名称ではあるが、展示作品はそれに限ることなく、ドローイングという行為を通して表現された作品であれば、ペインティングや彫刻、映像やインスタレーションなど、ジャンルは問わないという。「企画展では、実験をするように枠にとらわれない展示を行えたら」(井原)というHDL。今後の展開にも注目だ。

手嶋勇気 AID#10 2020 (c)Yuki Tejima

編集部

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