ふたりの作家は隣人同士。續橋仁子と山本桂輔の二人展がパープルームギャラリーで開催

續橋仁子と山本桂輔の二人展「パープルストリート、秋の素敵な展覧会」が、 神奈川・相模原のパープルームギャラリーで開催中。会期は10月10日まで。

續橋仁子 トルコの旅から 躍進 2016 Photo by Fuyumi Murata

 パープルームは、他者に無関心になってしまった現代美術シーンに向けて働きかける場として「パープルームギャラリー」を運営している。主宰の梅津庸一は、ギャラリーがある通りを「パープルストリート」と呼び、そのパープルストリートには、パープルームのメンバーであるシエニーチュアンとわきもとさきのアルバイト先なども並んでいる。

 今回パープルームギャラリーでは、續橋仁子と山本桂輔の二人展「パープルストリート、秋の素敵な展覧会」を開催(10月3日~10日)。本展の出展者である續橋の家も、パープルストリートから数メートル入ったところにあり、同じく山本もまたこの通り沿いに住んでいるという。一見なんの変哲もない並木道であるパープルストリートは、パープルームの人々にとって素敵な出会いと偶然を運ぶ道となっている。

 續橋は1934年神奈川県生まれ。体育大学に通っていた頃、江口隆哉に師事し現代舞踊を学び、現在も社交ダンスを続けているという。その後高校の体育教師になった續橋は、二科展の作家が講師を務める少人数の絵画教室に通っていたことから40歳の頃に絵画制作をスタート。2019年まで二科展と神奈川女流美術家展で活動していたが、現在は出品をやめている。そんな續橋のアトリエには、約40年分の作品がぎっしりと詰め込まれている。

 本展では、續橋がトルコ旅行で見た風景を主題にした大作シリーズを発表。画面には、カッパドキアの「妖精の煙突」と呼ばれる円錐形の岩やラクダが、まるでダンスの振り付けをするように緊張感を持って配される。

 いっぽう山本は1979年東京生まれ。都立芸術高校で美術を学び、2001年に東京造形大学彫刻科を卒業。03年まで研究生として同大学に在籍していた。現在は小山登美夫ギャラリー(小山芸術計画)に所属するアーティストだ。

 ゼロ年代までは、草花やキノコ、妖精などをモチーフに、デコラティブで複雑な構造を持つ木彫や絵画を制作。12年以降は、古色をベースにした落ち着いた作風に変化し、拾い集めた古道具に彫刻を施したり、植物や野菜、きのこなどを思わせる形態を擬人化させる小作品を手がけるようになる。

 その後16年に、東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻に入学し、日本の近代彫刻を学び直している。卒業制作では、橋本平八の《石に就て》(1928)を下敷きにした作品を発表した。近年は、日本の近代彫刻史に関心を向けた表現を行っている。現在は高校教師をしながら美術の活動を続ける山本。本展には、「異界からの訪問者」を思わせる佇まいの新作彫刻《徘徊と培養、ピンクの血》が出展される。

 戦前に生まれ、体育大学を卒業後、高校教師をしながら美術団体展を主な発表の場としてきた續橋。そして美大卒業後、コマーシャルギャラリーに所属しつつも高校の非常勤講師も勤めながら活動を行う山本。一見するとまったく違う属性の二人は、じつは隣人同士であり、教職の経験者でもある。二人の作品からどこか滲み出る「労働」のエッセンスに注目しながら鑑賞を楽しみたい。

山本桂輔 菌太郎 2015 Photo by Kenji Takahashi

編集部

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