写真や映像、立体など多様なメディアを組み合わせたインスタレーション作品を手がける武田雄介。その個展「眺望力 Prospects」が、愛知県名古屋市の山下ビルで開催されている。会期は9月20日まで。
武田は1985年広島県生まれ。2011年に金沢美術工芸大学大学院を修了した。主な個展に「アペルト06 武田雄介」(金沢21世紀美術館、石川)、18年「void」(MORI YU GALLERY、京都)などがある。そのほか、15年「VOCA展2015 現代美術の展望-新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、東京)、doubles vol.1「すくなくともいまは、目の前の街が利用するためにある」(WAITINGROOM、東京)、17年「Inscription」(芸宿、石川)など展覧会にも精力的に参加してきた。
本展のキュレーションを務めたのは長谷川新。本展を開催するにあたって、長谷川は以下のようにコメントしている。
当初展覧会は5月の予定だった。武田雄介は3月の終わりに搬入を終えている。5月からの展覧会には少し早すぎるかもしれないが、搬入と鑑賞の間に少し極端な時間差を導入することがポイントだった。コロナ禍の猛威によって、「少し極端な時間差」は1ヶ月から5ヶ月へと跳躍する。そのあいだ、武田のインスタレーションは、ずっと、誰にもみられることなく、展示会場にあり続けた(山下ビルのご理解のおかげである、記して感謝する)。展覧会が終わるころには、武田が再編したイメージの機構は、半年にわたって場を占有し続けたことになる。展覧会は、いまこの瞬間を凝視する権利の場所で、同時に、まとわりつく現在をなんとか振り払おうとする技術の空間だ。暴力的な現在を暴力的に切断し、それからたっぷりと時間をとって、ありったけの未来を眺める。