箱庭のような立体作品や大作のコラージュも。田名網敬一の新作個展が渋谷2会場で開催へ

1960年代から半世紀以上にわたって、アートシーンを牽引し続ける田名網敬一。その新作個展「記憶の修築」が、東京・渋谷のNANZUKAとNANZUKA 2Gの2会場で開催される。会期は7月11日~8月8日(NANZUKA)、7月4日~26日(NANZUKA 2G)。

(C) Keiichi Tanaami Courtesy of NANZUKA

 近年、自身の記憶や夢を原風景とした壮大な物語の制作に励む田名網敬一。ポップな妖怪画のような近作には、田名網の実体験に基づく様々な記憶が描かれている。今回、その新作個展「記憶の修築」が、東京・渋谷のNANZUKAとNANZUKA 2Gの2会場で開催される。会期は7月11日~8月8日(NANZUKA)、7月4日~26日(NANZUKA 2G)。

 本展は、幼少期に戦争を経験した田名網自身の記憶と創作活動のメカニズムを視覚的に暗喩するもの。箱庭的な立体作品から、大作のコラージュ作品、ミクストメディアのペインティングまで、多岐にわたる新作を見ることができる。

 いずれも描かれているのは、田名網の実体験に基づき、ときに夢を媒介として修築された様々な記憶だという。例えば、今回田名網が新たに描いたペインティングには、日本でも戦後の朝日新聞で紹介され人気を博したアーニー・ブッシュミラーによるアメリカンコミック『Nancy』(1938)や、1966年に初放映された日本を代表する特撮ヒーロー「ウルトラマン」が、戦時下の爆撃を想起させるシーンや田名網特有の奇形生物などとともに登場。

 また、ペインティングと平行して精力的に制作を続けている大作のコラージュ作品には、田名網が青年期に親しんだ20世紀中頃のアメリカの雑誌から引用したアメリカンコミックや往年のハリウッド女優の姿も発見できる。

 今日、田名網作品が再評価されている理由は、コミックスタイルの造形を武器にした独創性に留まらない。個人的に制作された作品であれ、雑誌やポスターなどに描き下ろしたコマーシャルワークであれ、その全貌が日本をフィルターとした戦後世界全体の社会文化史を物語っているからである。

田名網敬一 Nancy ① 2020 ©  Keiichi Tanaami Courtesy of NANZUKA

編集部

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