2020.2.19

世界初公開のガラス作品も。リヒターの回顧展「Gerhard Richter: Painting After All」がメトロポリタン美術館の分館で開催

ドイツを代表する現代美術家ゲルハルト・リヒターの回顧展「Gerhard Richter: Painting After All」が、2020年3月4日からニューヨークのメトロポリタン美術館の分館であるメット・ブロイヤーで開催される。世界初公開のガラス作品を含め、絵画やガラス彫刻、版画、写真など100点以上の作品を展示する本展では、リヒターの制作生涯を振り返る。

メトロポリタン美術館の公式サイトより

 「ドイツ最高峰の画家」と呼ばれているゲルハルト・リヒター。その回顧展「Gerhard Richter: Painting After All」が、2020年3月4日からニューヨークのメトロポリタン美術館の分館であるメット・ブロイヤーで開催される。

 リヒターは1932年ドイツ・ドレスデン(旧東ドイツ)生まれ。芸術大学在学中、西ドイツを旅行して抽象表現主義に強い影響を受け、精密に模写した写真のイメージを微妙にぼかす「フォト・ペインティング」や、グレイのみを用いた「グレイ・ペインティング」などのシリーズを発表してきた。

 絵画やガラス彫刻、版画、写真など100点以上の作品を展示する本展は、リヒターのアーティスト活動を振り返るもの。戦後の前衛芸術の実践や、抽象的・比喩的な作品、そしてマルチメディアを用いた作品を通し、リヒターの60年にわたる自然主義と抽象化、写実主義と写真との関係の探求を検証する。

 展覧会の出発点となるのは、リヒターが近年発表した「Birkenau」(2014)と「Cage」(2016)だ。いずれもアメリカで初めて公開される。

 前者は、ナチス強制収容所内の囚人によって撮影された既知の唯一の写真からインスパイアされたもの。4つの絵画は、個人と都市の歴史の複雑さを表現し、リヒターが絵画に対する信念を語る。また後者は、アメリカの作曲家・哲学者ジョン・ケージに敬意を表すもので、6つの絵画は、ケージによる「計算された事件」の作曲技法と類似する原理に基づいて制作されたという。

 また本展では、《Uncle Rudi》(1965)、《Betty》(1977)、《September》(2005)など代表的な作品が展示されるほか、1957年に発表されたモノプレントのシリーズ「Elbe」などあまり知られていない作品も紹介。加えて、世界初公開のガラス作品《Gray Mirrors(4 Parts)》(2018)と《House of Cards(5 Panes)》(2020)も登場する。

 なお、ニューヨークでの展示に続き、本展はロサンゼルスの現代美術館(2020年8月14日〜2021年1月19日)にも巡回する予定だ。