19世紀末に近代化するパリを離れてジヴェルニーの邸宅で理想の庭をつくり、睡蓮を主題とした連作を手がけたクロード・モネ(1840~1926)。そして、南仏に居を構え、テキスタイルや調度品を組み合わせた室内の風景を描いたアンリ・マティス(1869~1954)。
現実世界に「楽園」をつくり出した対照的なふたりに焦点を当てる展覧会「モネとマティス―もうひとつの楽園」が、箱根のポーラ美術館で開催される。会期は4月23日~11月3日。
本展には、国内外から約90点の作品が集結し、初期から晩年までのモネによる「睡蓮」の連作11点も展示される。また日本国内のコレクションが少なく、まとめて見られる機会の少ないマティスの油彩画約30点をはじめ、幅広いジャンルの作品を見ることができる。
モネはパリと郊外における近代化された風景を描き名声を得たが、フランスの各地を訪れ、戸外制作を行うなかで、都市の喧騒から遠ざかった独自の風景表現を探るようになった。周遊旅行の後、1890年にはジヴェルニーに邸宅を購入。自然のアトリエとして庭を造成し、その集大成として晩年も「睡蓮」の連作を描き続けた。
いっぽうのマティスは、イスラム美術や日本美術に空間表現・色彩などを学び、とくにイスラム美術の画面を覆い尽くす装飾模様の表現に大きな影響を受けた。1917年にニースを訪れてからは南仏の明るい陽光に魅了され、21年以降はアパルトマンを借りて自由に室内を飾り付け、独自の探求を深めていく。そして晩年には病や戦争による疎開といった苦難に見舞われながらも、礼拝堂装飾やタペストリー、切り紙絵などを手がけた。
本展はこうしたふたりの画業を、「選び抜かれた場所」「好きなもの」「晩年のアトリエ」といったキーワードで読み解くもの。また、「国立ゴブラン製作所」でつくられたふたりの絨毯、タペストリーにもフォーカスする。
ギュスターヴ・ジェフロワのもとでつくられたモネ《睡蓮》の絨毯に加え、マティス《リュート》(1943)と、それを元にしたタペストリー2点も紹介。同作の制作時には複製図版から下絵がつくられたため、今回はマティスの油彩画とタペストリーが一堂に会する、世界初の機会となる。
なお、7月からはアーティゾン美術館で「クロード・モネ―風景への問いかけ」展も開催。モネの生誕180周年にあたる今年は、モネの作品を間近に見られるチャンスが増えそうだ。
※2020年3月26日追記
新型コロナウイルスの影響を受け、展示内容が一部変更となった。詳細は公式ウェブサイトを参照