青木野枝は1958年生まれ。活動の初期から一貫して鉄を用い、円や細片に溶断したピースを場に合わせて溶接した作品を手がけてきた。「越後妻有アートトリエンナーレ」「あいちトリエンナーレ」といった芸術祭への参加のほか、今年2月の個展「ふりそそぐものたち」(長崎県美術館)も記憶に新しい。
そんな青木による個展「霧と山」が、鹿児島県霧島アートの森で開催されている。
本展では、鉄と半透明の青いガラスを組み合わせた大型の彫刻作品や、鉄と石けんを用いたインスタレーション、石膏を用いた作品などを展示。鉄を軸として、他素材も用いた新作を中心に構成されている。
加えて青木が試みたのは、霧島の自然を象徴する「霧」と「山」をテーマとした、すべての展示空間が連鎖する会場構成。鉄を有機的に拡張させた作品は自然や生命の循環を連想させ、周囲の空間までを作品の一部のように感じさせる。
いまなお精力的に活動を行う青木による新境地を垣間見ることのできる本展。民俗学や文化人類学に関心を持ち、実際に見て感じることを大切にしてきた青木が追い求める「普遍の美」の世界を体感することができるだろう。