写真を主なメディアとして使いながらテキストの執筆なども行う原田裕規の個展「One Million Seeings」が、東京・新宿のKEN NAKAHASHIで始まった。会期は10月8日~26日。
バブル期に一斉を風靡したクリスチャン・ラッセンや、心霊写真など、人々が見過ごしがちな物事に焦点を当てた問題提起型のプロジェクトに取り組み、注目を集めてきた。本展では、心霊写真のプロジェクトから発展させた原田初の映像作品とデジタル・コラージュで構成される。
映像作品は、「見届けること」や「意味を与えること」を念頭に置き、搬入期間中のギャラリーで24時間にわたり観客不在のパフォーマンスを行い、その様子をノンストップで記録したもの。その制作背景には、原田がここ近年個人的にも社会的にも、不条理な人間の憎悪や暴力、嫉妬などの感情を体験/目撃してきたことがあるという。
合理的な解釈を見出すことの難しい理解不能な悪意に見舞われたとき、人々は言葉を失ってしまう。しかし原田は「ある出来事について語る言葉が奪われてしまったときにこそ、その出来事をできるだけ長く『ただ見る』ことによって、新しい意味や存在理由を組み立て直すことができるのではないか」とコメントしている。